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特集「昭和のスター列伝」

2021年2月19日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵⑲ 
第三の影武者(1963年 社会派映画)

監督 井上梅次

出演 市川雷蔵/天知茂/万里昌代/高千穂ひづる/金子信雄

シネマ365日 No.3481

哀れさに胸がつぶれる 

特集「昭和のスター列伝3」

戦国の乱世、城主にそっくりな容貌ゆえに影武者にしたてられた青年の悲劇です。雷蔵が城主・池本安高と貧農の倅・杏之助の二役です。城主の癖、振る舞い、歩き方、喋り方など日常の全てを軍監・篠村左平太(金子信雄)の特訓を受け、数ヶ月後には側近も見破れない影武者となる。影武者は3人いた。杏之助は三番目で「影の三番」と呼ばれた。3人は定められた場所で寝起きし場内の誰とも会ってはならない。城主の閨の替え玉も無事勤めた杏之助は城主と揃いの武装で他の2人と共に合戦に出た。勝ち戦だったが、城主安高は矢で左目を射られ失明した。お前たちの目も潰すと左平太は残酷な命令を下す。影の2番は逃走を試みるが斬られ、1番と3番は醜く左目をえぐられる。冗談じゃないわよ▼安高は同じ飛騨山間にある桜洞城の城主の娘・照姫(高千穂ひづる)と婚儀を進めていたが、夜襲に会って城は奪われ影の1番は安高の身代わりに戦死した。杏之助は安高を落ち延びさせたが、右腕を失った安高を見て恐ろしくなる。自分の右腕まで切り落とされるからだ。杏之助は夢中で安高を殺してしまう。左平太は杏之助を安高に仕立て上げ城を取り返す戦機を狙った。苦戦を強いられたが城は奪い返した。杏之助は戦場のどさくさに紛れ、ただ1人自分の正体を知る左平太を殺し城主・安高になりすます。杏之助の正体を知る人物がもう一人いた。初めて閨を共にした小萩(万里昌代)だ。彼女は自分をやさしく扱う杏之助が、粗暴な城主とは違う男であるとわかっていた▼飛騨を平定した安高(杏之助)は得意の絶頂で照姫と結婚することになった。ところが照姫の従兄であり城主の側近・三木定光(天知茂)は、左平太が「影の3番」と書かれた布を持っていたことから、杏之助が影武者であることを見破った。杏之助の子を身ごもっていた小萩を斬り捨て、杏之助を安高の身分のまま座敷牢に幽閉する。20数年後、秀吉軍は桜洞城を落城させ座敷牢で老人を発見したがすぐ死亡した。彼が何者であったかは誰も詮索しなかった。利用されるだけされて死んでいく影の哀れさ。「俺は城主ではない、杏之助だ」と叫んでも用済みとなってしまえば「殿、ご乱心」で片付いた。杏之助には影になりきる以外、生き延びる道はなかったのだから、今さら(アイデンティティを失うからさ)と彼を責めたところで始まらない。小萩は国境を出て一緒に暮らそうとすがるのだが、動かなかったのは杏之助だったのだから。影武者とは「武士道残酷物語」の最たるひとつです。「殿の身代わりになるのだ。誉れとせよ」なんて不条理がまかり通った時代と制度の怖さ。ラストは絶叫する杏之助に胸がつぶれる。雷蔵の作品には悲劇が多いが、本作は「二度と見たくない雷さま」でした。

 

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