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特集「別室でミステリーを」

2021年3月27日

特集「別室でミステリーを3」④ 
盗まれたカラヴァッジョ(2020年 ミステリー映画)

監督 ロベルト・アンドー

出演 ミカエラ・ラマゾッティ/アレッサンドロ・ガスマン/レナート・カリペンティエリ/ラウラ・モランテ

シネマ365日 No.3517

映画こそがミステリー

映画の仕立て方がミステリーでした。ストーリーを追うともつれる一方ですので、単純にまとめます。ヴァレリア(ミカエラ・ラマゾッティ)は有名脚本家アレッサンドロ・ガスマンの秘書兼ゴーストライター。10年間不実な男のために脚本のアイデアから執筆までやってきた。最近、彼は映画会社と契約した脚本の完成を急かされているが一行も書けていない。ヴァレリアに泣きつく。彼女もこれといったアイデアはなかったところへ、市場で出会った年配の紳士が面白いネタを提供するから家に来てほしいという。彼の名はラック(レナート・カルペンティエリ)。ネタは、未だ未解決のカラヴァッジョの絵画盗難事件の真相だ。彼の話を元にプロットを書いてガスマンに渡す。タイトルは「名もない物語」▼読んだプロデューサーや関係者は「傑作だ」と飛び上がり、映画化に進展した。関係者の中にマフィアのスパイがいた。脚本の内容を知ったマフィアは「これは想像ではなく事実だ」と仰天。情報の出所をガスマンに詰め寄ったが自分が書いたものでないのでいくら拷問されても答えようがない。昏睡状態で放り出された。映画会社は大物監督クンツェの起用を大々的に発表した。ガスマンが意識不明なので後半部の脚本は未完成のまま撮影に入った。ヴァレリアはミスターXと名乗り、脚本の続きを自力で書いてメールで送信するようになるが、Xなる人物をマフィアは必死で追い詰めていた。自分たちの犯罪を熟知している(らしい)Xが書き進めば、いずれ犯行が明るみに出ると恐れたわけ。マフィアの1人がパソコンの発信源からヴァレリアのいるホテルを突き止め、Xは彼女だと知ったが、仲間には「ちがう」と報告しヴァレリアを守る。ヴァレリアの母アマリア(ラウラ・モランテ)は文化大臣(文部大臣のようなもの)のスピーチライターで、大臣はアマリアのコメントを丸呑みして答弁するだけ。官邸で極秘の会議が行われることになり、テーマはカラヴァッジョの絵画だとヴァレリアに教えたラックは、母親を通じて大臣に言わせる内容を与える▼議題は「匿名の人物がカラヴァッジョの絵画の返還を提案してきた。鑑定の結果本物だとわかった。買い戻せばイタリアが失墜した栄誉を取り戻すことができる」実を言うと政府の上層部でマフィアからカラヴァッジョの絵を購入する裏取引が動いていた。カラヴァッジョの奪回は死に体の内閣にとって天恵になるはずだったが、マイクロ補聴器を通じてアマリアの(実はラックの)指示が入った。大臣はこういう「謎めいた寄贈者は誰だ。首相の任命した人物がマフィアと盗難美術品の売買を裏取引していると知れたら、内閣は倒壊だ」これで現金が喉から手がでるほど欲しかったマフィアの計画は阻止されることになった。カラヴァッジョの絵は依然として行方不明だ▼ラックは政府高官で長年カラヴァッジョの盗難事件を追跡していた。アマリアはラックがヴァレリアの父親であることを打ち明ける。話は半年後に飛ぶ。病院で意識が戻ったガスマンがインタビュアーの質問に答えている。「『名もない物語』の真の作者は誰かと聞かれてあなたは」「私だと」「真実ですか」「いいや」「『辛抱の足りない女』は?」「いいや」「つまりあなたは他人の書いた脚本で映画賞や権利料を受け取っていたのですね」「そうです」「書いたのはヴァレリアさんですか」「そうです」「なぜそんな行為を?」「黙秘します。真実は常に必然とは限らない」。カメラが引き、観客がスクリーンを見ている。スクリーンのヴァレリアが「私たちは真実に殺され虚構に救われている。私はずっと彼を愛していました」…そこは映画館。スクリーンに引き込まれているガスマンとヴァレリアと、生きているラック、アマリアと大臣も映画を見ている。これまで観客が見てきた物語はすべて映画の内容だったということ。1969年、盗難にあった絵画はパレルモの聖ロレンツォ礼拝堂の「天使降臨」だ。エンドには盗難事件その後やヴァレリアがアカデミー賞脚本賞候補になったと出るがフェイクだ。ラストの引っ掛けに虚を突かれ、アタマに来ますが、同時にそんな映画作りを可能にするカラヴァッジョがすごいのだと思うことにしました。本欄でも「カラヴァッジオ」(ママ)、「カラヴァッジョ天才画家の光と影」の2本をあげましたが、やはり絵画史のヒーローであり、同時に絵画史を塗り替えたアンチヒーローでもあります。彼の反逆の人生を知れば知るほど、静謐をたたえた彼の絵はミステリアスで、絵にふさわしい物語をつむぎ出していくでしょう。

 

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