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枝雀の時間

2021年4月5日

特集「枝雀の時間」⑤ 
「崇徳院」(上)枝雀のセクシャリティ

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出演 桂枝雀

シネマ365日 No.3526

枝雀の「宝」

特集「枝雀の時間」

おすぎとピーコとの対談で、枝雀は率直に自分のセクシャリティに及んでいます。ピーコ「枝雀さん、絶対素質はあるみたいよ」。おすぎ「すごく奇麗でなおやかな身体つきなさっているから」。ピーコ「高座では女性のしぐさも出てきますね。奥様を見て勉強なさるのですか?」おすぎ「まあ、奥様がいらっしゃるのですか?」ピーコ「大丈夫よ。奥様がいらっしゃっても」枝雀「何が大丈夫なんですか?」ピーコ「いいえ、高座での女性のしぐさ」枝雀「確かにね。私にも多少、そのケはあるなあという気はするのです。ちょっと、こう紅をさしたりするの、好きですしね」。ピッタリだ、他の人にはない色気がでるかもしれないとピーコが褒める。「崇徳院」はこの枝雀の色気がよくわかる一編だ。高津神社で出会ったお嬢さんに大店の若旦那が一目惚れする。飯の喉を通らなくなり、部屋にこもりきり。親が聞いてもわけを言わない。医者に見せても処方はないという。大旦那は弱りはて幼馴染の熊五郎に、息子の病の原因を探ってくれと頼む▼熊五郎は意気に感じ、締め切った障子をそっと開けて、若旦那の部屋に入っていく。「誰も来たらいかんというてんのになあ。そこへ来たんは一体誰やねん」か細い若旦那の声。精気あふれる熊五郎が声をはりあげる。「アホ。大きな声出すねやないがな。びっくりしたやないか。もうこれだけは誰にも言わんと黙って死んでしまおうと思ってたのやけど、お前にだけは聞いてもらお」枝雀はしなを作り「こんなこと聞いたさかい、お前、笑うのやないで。笑ろたらわたい、恥ずかしいさかい、死んでしまうよってに…しょうがない、いうてしまうわ。実はな、20日ほど前、高津さんへお参りしたのや」。そこへお供を4、5人も連れたみめ美しい若い女性がやってきた。「お年頃は十七、八。綺麗な、綺麗なお方がお越しになった」枝雀は身を揉みつつ「え? 高津の茶店では分厚い羊羹が出る? 放っときいな、そんなこと」ピントはずれなことを言う熊五郎を叱り、そそっかしい熊五郎は早速探し出してくると約束したが、どこの誰とも若旦那は知らない。ただひとつの手がかりはお嬢さんが料紙に認めた崇徳院の上の句「瀬を早み岩にせかるる滝川の」だ。下の句は「割れても末に買わんぞと思う」。だから若旦那はお嬢さんの意図を「ここはひとまずお別れしますが、また必ずお会いしたい」と受け取り恋心が燃え立った▼大旦那から3日の猶予をもらった熊五郎は足を棒にして大阪の町を歩くが成果はない。2日たった。3日以内に探し出してくれたら蔵付きの借家と礼金300円をあげるという大旦那の約束に、熊五郎は欲と二人連れで一心不乱に歩き回り、疲労困憊して家に戻った。女房は礼金300円と蔵付きの借家と聞いた時「よかったやないか、あんた。一生懸命働いて1日48銭しかなれへんのに、いっぺんに300円。わたいも心当たり聞いて回ったげるよって、あんた、精出して探しなはれ」激励して送り出したが、亭主はヨレヨレになって帰ってきた。枝雀は声を大事にした。声そのものに笑える要素がある、声は宝だというのが持論だった。「こまり声」「すかし声」「きわまり声」「おどけ声」と分類している。後段に入って、枝雀の「宝」がじんわり力を発揮する。女房のセリフとその語る声がいいのである。

 

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