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特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」

2021年4月20日

特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」⑦
レディ・マクベス(下)(2020年 サイコ・サスペンス映画)

監督 ウィリアム・オールドロイド

出演 フローレンス・ピュー

シネマ365日 No.3541

悪のヒロイン

特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」

アグネスという女性が訪れ、「レスター様(キャサリンの夫)と私の娘の間にはこの子、テディ(5歳くらいの男の子)がいます。自分の死後の処理を正式な書類で残してくださっています」ちゃんと女がいたのだ。アグネスはどんどん荷物を運び込み「テディにあなたの部屋を譲ってください」。セバスチャンは馬番に逆戻り。テディはキャサリンになついている。このままでは財産はテディのものだろう。面白くない。出て行くという男をキャサリンは止めた。テディが家に帰ってこない日があった。探し回って滝ツボ付近にいる男の子をセバスチャンが連れて帰った。疲れ切った祖母アグネスを休ませたキャサリンは夜中、セバスチャンを引き入れ、テディを枕で窒息死させた▼翌朝、神父や警察が来て事情を聞いた。キャサリン「うたた寝していて気がついたら死んでいました」。セバスチャンが耐えきれない、という口調で「キャサリンがテディを殺した。俺が手伝った。彼女は夫も殺した。義父はキノコで殺した。テディを殺したら俺と一緒になれるから彼も殺した。彼女は俺を手放さない。ビョーキだ!」。キャサリン眉も動かさず「ウソよ。アナと彼の共謀よ。キノコを採ってくるのはアナ。セバスチャンはいつも同行していた」事実そうだった。二人は手錠をはめられ監獄行き。アグネスは荷物をまとめ、1人寂しく屋敷を去った。キャサリンはセバスチャンの子を妊娠している。もうすぐお腹が目立ってくる。居間で1人になった彼女は、座り慣れたソファに青いドレスを着て座り、いつものように正面を見つめる…。キャサリンが苦しみながら自己脱皮するのではなく、男たちを尻目に着々、本来の自分を出していく過程は、ヤワな“自分探し”などではありません。化けたのでも変わったのでもない、トラがトラになっただけの話。野生動物の怜悧な本能がキャサリンを導いている。ヘタレの舅も夫も消えてもらった。あとはセバスチャンとのんびり(?)暮らそうとしたのに、邪魔しに来たアグネスは追いはらい、夫の隠し子も死んでもらった▼それにしてもセバスチャンの意気地のないこと。私としたことが、一時の気の迷いだったとしか言いようがない。生まれた子供が男だったら、少しは賢くて骨のある男にしたいものだわ…そう考えたかどうかは知らんが、彼女の落ち着きようを見ると、神経を病むとか、殺人のトラウマに狂うとかは考えにくい。私の暮らしは昨日に続く今日、今日に続く明日。家屋敷は相続した、ゆっくり考える時間は充分にある。荒野を好きなだけ歩き、風に身を任せ、新鮮な空気でリフレッシュしよう。ああ、気持ちいい…こんなことを書きたくなるのも、ラストの彼女の風情には孤独とか寂しさが毫もなく、厳しさの中に自若としていたからだ。本作は一言で言うと連続殺人によって手に入れた自立と自由です。罪の意識はかけらもない。キャサリンはビッチ、それも悪の論理を飛翔した稀なるヒロインです。フローレンス・ピューは本作後「トレイン・ミッション」「ファイティング・ファミリー」「ミッドサマー」「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」と立て続けに出演。キャリアを築きつつあります。

 

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