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特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」

2021年4月24日

特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」⑪
エリザのために(下)(2017年 社会派映画)

監督 クリスティアン・ムンジウ

出演 アドリアン・ティティエ/マリア=ヴィクトリア・ドラグシ

シネマ365日 No.3545

エリザもパパも頑張って

特集「花咲き満ちる4月のベストコレクション」

副市長ブライが刑事告発された。検察がパパを訪ね「税関時代の職務始め様々な疑惑が浮上しています」。ブライは心臓発作で入院中だ。主治医はパパだ。容態は「勾留に耐えますか」「論外です」「先生のことはみな誠実な人柄で、謝礼も要求しないと言っています。誰にでも弱みはある。ブライ氏との会話は全て捜査資料に記録ズミです」。検察はすべてつかんだ上で「ブライ氏の尋問を許可していただきたい。このままだとお嬢さんから話を聞くことになります。再考をお願いしたい」そう言って帰った。パパ・ロメオには愛人がいる。小学校の教師のシングルマザー、サンドラだ。自分の息子の言語療法のツテをロメオに頼んでいたが、娘にかかりきりで放置している。愛人が恨み言をいう▼ロメオの母親が浴室で倒れ、エリザは愛人宅に父親を訪ねた。症状は大事に至らなかったが、娘は父に「ママとサンドラのことを話し合って。隠すなら明日の試験は休む」。親の心子知らず。パパは怒る。「どれだけ苦労して今の暮らしがあると思う」「だからって間違ったことをしてまで…」娘も硬派だ。「なぜママを裏切ったの」「関係が壊れても続ける努力をしたのはお前のためだ」それなのに娘は「イギリスに行かず、彼と一緒にいたい」なんだと! パパの苦労がわかっているのか。サンドラの存在を知った母親マグダは「エリザと一緒にイギリスへ行くわ」「本人はなんというかな」「お料理を作ってあの子の帰りを待つわ。この家は売るわ。エリザが気づく前から限界だった。娘が巣立てば自由の身よ。あなた、出て行って!」パパ、三界に家なし。エリザはそれでも卒業式に来てほしいとパパに頼む。エリザは答案用紙に印をつけず自力のままで試験を終えた。卒業式の日。父親に笑顔を見せる娘に「まだ(イギリスに行くかどうか)迷っているのか。残念だが自分で決めろ」。パパは娘に任せようと決めました。最善の方法ね。サンドラの息子の言語療養師も手配した。あとは自身の刑務所行きかどうかの問題だ。再訪した検察官に「手錠は要りますか。娘の聴取だけは勘弁してほしい」「考慮します」検察もロメオが主犯ではないし、始めから逮捕は考えていない。要は「娘大事」で脱線した父親だっただけだ。卒業記念撮影。娘は小さな声でパパに「試験の最終日、私だけ時間を延長してもらったの。涙が止まらなくて。それで…やましいことではないわ。私、うまくやったでしょ」。なんと、娘はしたたかではないか。晴れやかな笑顔で級友たちとカメラに収まるエリザ。彼女の留学にも試験の結果にも触れず映画はエンドだ。父親を混乱させたのは娘への愛情か、絶望的な国の後進性か。パパの空回りに悲哀を覚えたけれど、未来の希望と明るさを示すエリザの笑顔が、本作を虚しいままで終わらせていません。子供は親のあずかり知らぬところで羽ばたく。エリザも、そしてパパも頑張って。

 

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