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特集「B級映画に愛をこめて」

2021年4月25日

特集「B級映画に愛を込めて17」①
エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所(2020年 ホラー映画)

監督 ラッセル・オーウェン

出演 ジェス・チャンリャウ

シネマ365日 No.3546

冷笑するなかれ

特集「B級映画に愛を込めて17」

アイルランド南西1209キロ、絶海の孤島に浮かぶのは聖レオナルズ国際刑務所兼医療研究所。人口1109人の島に受刑者251人の監獄島だ。受刑者は全員死刑囚。ここで密かに遺伝子組み替え実験が行われていた。実験台になるのは減刑と引き換えにモルモットにされた囚人たち。ところが実験中、人間を凶暴化する謎のウィルスが発生し被験者たちはゾンビ化した。感染は拡大し刑務所の内も外もゾンビが蔓延。元特殊部隊の女囚ストーン(ジェス・チャンリャウ)は、生き残った女囚たちと決死のサバイバルを繰り広げる。B級ファンがゾクゾクする映画です。女囚イジメの看守、女囚のボス・黒人のブッチャー、実験が成功すればエイズやアルツハーマーの治療法が開発できると信じて実験を押し進めてきた女刑務所長、島で唯ひとりの医師は虚無感のため薬物依存症だ▼血液か接触によって感染する。監禁室から脱走したゾンビは人肉捕食のため女囚と看守を襲う。刑務所の壁の外には感染した住民が押し入ろうとしている。所長は妹が、ブッチャーは娘が外にいる。彼女らは意を決し、塀の扉を開けるがとたんにゾンビが群がり、助けられたのは所長の妹とクロエという少女ひとりだった。どうせ「こいつらは死刑囚だから囮に使って、食われている間に隙をついて逃げよう」という看守もいれば女囚もいた。しかし何としてでも全員で脱出しようとするストーンの堅い意志にブッチャーはともに血路を開く。銃器の扱いに慣れたストーンと違い、ブッチャーの武器は手斧である。ゾンビの手首や首をガンガン切り落とす。男子房から紛れ込んだゲイのフランシスが抜け道を知っていた。電源が断たれ、細い暗い迷路を手探りで進む。所長は妹も一緒に助けようと首に鎖をつけて引きずっていくのである▼ストーンは医師を誤射して死なせてしまった。彼女の死刑の理由は上院議員とその家族を殺したことにある。事実は妻と娘に暴力を振るう議員を止めようとして射殺したことだ。ストーンはしかし罪の意識がつきまとい、被実験台になっての減刑より死刑を選んでいた。医師はストーンの苦しみを理解していて「(誤射を)気にするな」と言って死ぬ。遺伝子組換え実験の詳細や研究室の実態や、他の研究者らをスパッと削除しているので、醜悪なゾンビ・オン・パレードだけでは無理がある、などとかまっていては本作についていけません。100分足らずの尺がそれはもう刺激的で、女囚たちの乾いた助け合いや、感染した、もはやこれまでと自ら命を絶つ女囚や、クロエに娘の面影を見て守ってやるブッチャーのやさしさや、要所、要所で見せ場を作っています。所長も妹ゾンビも死んだ。生き残っているのはブッチャーとクロエとストーンだ。クロエにゾンビ化の兆候が出たとブッチャーはわかった。「ストーン、逃げな。時間を無駄にするな」。ブッチャーはクロエを抱いて死刑執行台の電気椅子に座ると、群がってくるゾンビもろともスイッチを入れた▼ストーンは壁の外に出た。目の前に海が広がっている。ヘリが見えた。所長が死ぬ寸前救出を要請したのだ。飛び立つ。監獄島が眼下にある。ストーンは母親が自分を招く幻想を見る。しかしその母の形相は醜く変わり、口から黒い液を吐き出した。みるみるストーンの顔面に細い赤い血管が走り凶暴な叫び声をあげた。感染。生存者ゼロ。たかがゾンビ映画と冷笑するなかれ。潔いまでに救いのない結末が、メジャー映画にはない透明感を感じさせます。

 

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