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特集「ディーバ(大女優)」

2021年5月1日

特集「ディーバ18」原節子①
安城家の舞踏会(上)(1947年 家族映画)

監督 吉村公三郎

出演 原節子/森雅之/滝沢修

シネマ365日 No.3552

舞踏会の終わり

特集「ディーバ18」

1947年(昭和22年)。華族制度が廃止された4、5カ月後の公開でした。戦後2年という時期にこんな上質の映画を撮っていたなんて、日本映画ってすごい。元伯爵・安城忠彦(滝沢修)は没落する貴族階級を代表する人物。財産を手放し屋敷は借金のかたに。闇成金の新川が手に入れダンスホールにしようと計画していた。末娘の敦子(原節子)は安城家の元運転手から成り上がり、運送会社を経営する遠山に家を買い取ってもらおうと父に懇願するが、父親も敦子の姉・昭子も「運転手風情に」とプライドばかり高い。長男正彦(森雅之)は怠惰でニヒルな放蕩息子だ。華族の生活に未練のある忠彦は、華族生活最後に屋敷で舞踏会を開こうと提案する。舞踏会の夜、大広間には皇族や名家から招待客が集まる。忠彦は新川に金の返済に温情を乞うが、伯爵の肩書きのない、利用価値をなくした忠彦を新川は突き放し、娘との婚約も解消すると告げる▼忠彦は「殿様」、正彦は「若様」と呼ばれる家である。贅を尽くした家具調度、温室のある広大な庭園、室内に建売の家でも建ちそうな高い天井の大広間。現実の変化についていけない父親や兄や姉の中で、一人敦子は時代に対応し、使用人の行く末にも気を配り、舞踏会の準備には怠りないよう目を配る。正彦は長年関係し結婚の口約束までした小間使いの滝を平気で棄てる男だ。昭子は結婚に敗れ家に実家に戻ったが、彼女に熱い思いを抱く遠山を「汚らわしい」と毛嫌いする。敦子だけが彼の実力を買い、家を売却する相手として信頼している。舞踏会は出席者それぞれの思惑、怨念と回顧と冷笑が入り混じる。金が返せないなら今夜限り屋敷を出て行ってもらう、と忠彦に新川が宣告するのを聞いた正彦は、婚約者を酔わせ犯そうとするが未遂に終わる。当主・忠彦は青年時代パリに留学し、絵の勉強をしたがそれだけ。安城家とは生活不能者の集まりなのだ▼敦子は遠山に話をつけ、会場で新川に現金を突きつけ借金を返済し、屋敷を遠山に売却したことを告げる。屋敷は自分のものになったが昭子は自分を認めない。やけになった遠山は屋敷を去る。彼の真情に打たれた昭子は砂浜に後を追う。ハイヒールが脱げ真珠のネックレスは外れたまま、裸足で走るのは「モロッコ」を彷彿。ルキノ・ヴィスコンティの傑作「山猫」はこれまた本作のオマージュではないかと思えるほど、ニュアンスが似通っている。舞踏会の終わりに、忠彦は愛人だった千代と結婚することを発表するが、なすべき義務を果たして忠彦は死ぬつもりだった。舞踏会が終わり、誰もいなくなったホールで、敦子はいたわるように父と踊る。これが安城家の舞踏会の最後だった。

 

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