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特集「ディーバ(大女優)」

2021年5月2日

特集「ディーバ18」原節子②
安城家の舞踏会(下)(1947年 家族映画)

監督 吉村公三郎

出演 原節子/森雅之/滝沢修

シネマ365日 No.3553

原節子の猛タックル

特集「ディーバ18」

原節子は27歳でした。彼女は女優には珍しく、娼婦役・芸者役がありません。令嬢、教師、女医と、健康で明るい女性役が多かった。本作も例外ではありませんが、ヘタレの父親と社会に横を向いた兄と姉を助け、明日を向いて人生を出直そうとする、勇気ある女性を好演しています。ラストのダンスシーンは、映画史に残る美しいシーンです。これを撮る前、原はダンス教習所に通った。彼女はこれ以前にもダンスシーンの必要な作品(「緑の地平線」)がありましたが、ダンスが苦手で踊らずにすむようにしてもらった逸話の持ち主です。その当時15歳だった原は12年後の本作で綺麗なダンスを見せています。もともと「ダンスは好きでなかった。男性と手を握って踊るなどとても考えられず、性分に合わず、いくら習っても上手くならなかった」のですが、無類の努力家であった彼女は、見違えるようなシーンにしました▼滝沢修の伯爵、森雅之の長男役は、はまっています。特に森雅之は、女にビンタをくらってヘラヘラ笑い、ピアノを弾き始めるような投げやりな放蕩息子ですが、父の結婚を知り自室に戻ってベッドに突っ伏して号泣します。彼は彼なりにどうしようもない時代の変化を思い知り、泣くしかない、という究極のヘタレ場面です。端正な容貌だけに虚無感が似合います。終始、遠山を見下しまともに口もきかなかった昭子が、いざ遠山が自分から離れていくと分かると前後も忘れて取り乱し、裸足で追いかけるというのも、ヨーロッパ映画ふう。思えば終戦後2年、堰を切ったようにアメリカの文化がなだれ込んできた時代を、新旧二つの文化のぶつかり合いとして描いた映画でした▼原節子が発する「あそばせ」言葉は、今や無形文化財ですね。よくこんなしっかりした娘が頼りない家族の中で育ったものだと思えるほど、聡明でたくましい。「これからは私たちも働いて食べていくのよ」という令嬢の言葉を聞いて、召使たちは涙する。没落する安城家に洟も引っ掛けなくなった現金な闇成金も、安城家の面々があまりに現実感覚のないせいか、貸した金、返せというのがギャグみたいに聞こえます。かつての栄光の豪華客船は今や難破船、どうやって脱出するかの人間劇を、わずか90分の尺に織り込んだ完成度の高さに引き込まれました。アッと驚いたのは、父親が自殺しようとした寸前、敦子が猛ダッシュしてタックル、ラグビー全日本代表も顔負け。彼女はスポーツが好きで「青い山脈」の自転車も難なく乗りこなしています。プライドのある令嬢役って、小津作品の庶民キャラとはまた違った原の持ち味がよく出ていました。

 

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