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特集「ディーバ(大女優)」

2021年5月3日

特集「ディーバ18」原節子③
お嬢さん乾杯!(上)(1949年 コメディ映画)

監督 木下恵介

出演 原節子/佐野周二/佐田啓二

シネマ365日 No.3554

絶滅危惧種の日本語

特集「ディーバ18」

原節子は出演作の中で本作がいちばん好きだと言っている。「安城家の舞踏会」に続いて、零落した金持ちの家のお嬢さんキャラである。自動車修理工場の社長で戦後成金の石津圭三(佐野周二)は、34歳にもなって独身では世間体がよくないと人に勧められ、しぶしぶ会ったが落雷に打たれたように恋した、それが池田泰子(原節子)だ。まっしぐらに結婚に向かって突進する圭三だが、泰子には幾つか言いにくい事情がある。父親は詐欺に騙され刑務所にいる。家屋敷は抵当に入り、売れるものは全て売って家は空っぽ。圭三が泰子にピアノを弾いてと所望してもピアノはない。泰子には婚約者がおり、心から愛していたが死んでしまった、その痛手から立ち直っていない。しかし誠実で明るい圭三に惹かれ、結婚を承諾する。ところがデートしても屈託ありげな泰子の表情に、圭三はやっぱり釣り合わない、住む世界が違う、とはかなみ田舎に帰ってしまう。泰子が意を決し東京駅に圭三を追うシーンでエンド。戦後の傷跡も濃い昭和26年だ。心がほのぼのするラブロマンスに、多くの人が癒された▼圭三は「なんとなく寄り付きにくいのです。あなたが僕を好いていてくれるとは思えない。難しい音楽はわからないし、礼儀作法も知らん田舎者です」。原は「こんにちは」というような口調で「好きです」と言い「私に不満を感じるのはお付き合いして日が浅いからです。私の努力が足りません。申し訳ありません」男は飛び上がる。「努力しないと僕が愛せないのですか!」原、あっさり「結婚しましょう。そうすればうまくいきますわ」。寝てしまえば何とかなると言っているのと同じだ。この人、「天上の美女」かもしれないが、割りきった気性は剛毅である。「いやだ。愛されてもいないのに結婚するなんて、あなたが気の毒だ」と男グジグジ。「あなたのようにお金があって、親切な人と結婚する女がどうして可哀想なのですか。あなたもおっしゃったじゃありませんか。この世はお金だと」お嬢さん、腹がすわっています▼デートの後、別れがたい男が食事だ、お茶何だと誘うのに「疲れていますので今日はこれで」「またこの次に」「今日は帰りましょう」と断り続ける泰子が、女友達のバレエ教室により「ああ、お腹すいた〜」とつぶやく。早く一人になって(あるいは女友だちと)気楽に食事でもしたかったのだろう。ジレンマに陥っている圭三を、泰子はなんとかしなければ、と思いあぐねサシで話し合うために彼の部屋で一人待つ。告白シーンは原節子のワンマンショーで、彼女の目の表情がとてもいい。ヒタと凝視するかと思えば、(チェッ。悟りの鈍いヤツ)と思っていても、それを今は絶滅危惧種となった日本語で語ると、実に音楽的である。文字にするとこうだ。

 

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