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特集「ディーバ(大女優)」

2021年5月5日

特集「ディーバ18」原節子⑤
女医の診察室 (1950年 恋愛映画)

監督 吉村簾

出演 原節子/上原謙

シネマ365日 No.3556

原節子が望んだ役

特集「ディーバ18」

神聖ガルボ帝国があるなら「神聖原節子帝国」もあるのでは。本作の崇高なまでの原節子にケチつけたらバチが当たりそうです。原節子が自ら映画化を望んだ珍しい作品です。約100本近い彼女の出演作で、気にいっているのは出来・不出来は別として「緑の地平線」「安城家の舞踏会」「お嬢さん乾杯!」それに「女医の診察室」をあげています。大恋愛映画でありまして、原節子が上原謙を誘惑する、彼に迫るラブシーンまであります。原は自分のことを色気に乏しい女優だと自認し、映画界に入る前は学校の先生になりたかったといい、だからまあ、お医者さんの役は気に入っていたのでしょうね。聖ペトロ施療病院の産婦人科部長・医博、田島文子が原節子です。外来患者を診察し、重患を手術し、部下の女性医師の学位論文を助け、365日休日を取らず、激務に次ぐ激務、しかも自分は重い心臓疾患を抱えているという、薄幸にして美貌のヒロインです▼新任の医師が2人着任する。内科部長と顧問の川村信吉(上原謙)だ。文子の父の弟子であり、かつて結婚を約束した男。でも彼は成績が悪く、文子は勉強に専念させるため別れを切り出す。自分は医学に専心、学位も取った。その時の猛勉の無理が宿痾の心臓病の遠因となっている。信吉は文子の真意がわからず別の女性と結婚し男の子がいる。再開した文子は皮肉な運命にがっくり。仕事に没頭することが苦しみから逃れる方法だと、さらにテキパキ業務に精励する。信吉が他の女性と結婚したことは風の便りに知っていたが、まさか同じ職場で出会うとは思わなかった。再会後2人は距離を縮め、病院の職員一同、慰労会で出かけた1泊2日のピクニックで、道に迷って辿り着いた炭焼き小屋でお互いの思いを確認する…男は「あなたがきっぱり別れようと言った」から去ったのだと指摘する。悟りの鈍い気のつかない男である。文子は「いいえ、あなたこそ夫と定めたただひとりの男性。私は不幸だわ。あなたを他の人に取られたことがわかってから、私はずっと不幸」。男は「本当のあなたの姿をここで見せていただいたとしても、それを変える力も資格も僕にはありません。ただ耐え忍ぶという生き方しかできない人間になりました」「このまま死ぬのはどうしてもイヤ。月の光に輝くあなたの顔が見たかった(ちょうど満月だった)。ここではあなたに言えない言葉はないはず」。で、小屋に戻ると外から行方不明になったふたりを心配した病院の人々の「田島せんせ〜い」とかいう声が近づいてくる。まあ残念ね▼文子はあと2、3カ月の余命だと診断される。信吉の妻が子宮外妊娠で運び込まれた。どう見ても手遅れと女医たちが言う手術を文子は敢行し力尽きて倒れそのまま病床に臥す。その年のクリスマス。命を取り留めた信吉の妻は夫と賛美歌を歌う。信吉が来た。心配する彼に「奥様の元に戻って。私はとても幸せよ。あなたを愛したことを奥様の前でも気兼ねなく誇ることができます。私はあなたのお仕事の中に生きています」(信吉は心臓外科医)。ラストは息を引き取った原節子の顔がアップになる。アップの時間が長すぎると思うけど。原節子は好きで女優になったわけではないと再々語っています。「颱風圏の女」も「女医」も評価はクソミソだった。確かに凡作だけどね、でも原は評価の高い小津作品より本作の女医みたいな、こうと思ったら手に負えない女が似合ったような気がする。

 

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