女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「偏愛力」

2021年5月31日

特集「偏愛力10」⑨
ザ・ハント(2020年 社会派映画)

監督 クレイグ・ゾベル

出演 ヒラリー・スワンク/ベティ・ギルピン

シネマ365日 No.3582

異常領域の女たち

大企業の重役たちが冗談で「マナーゲート」という組織を作り、庶民階級を「人間刈り」しようと、コミュニケーション・ツールでやりとりしていた。内容をハッキングされネット上に炎上する。企業のイメージを損なった責任問題で、大手のCEO、アシーナ(ヒラリー・スワンク)らは解任となった。お遊びだった「人間刈り」を世界中に拡散した張本人たちに復讐してやる。アシーナは本当に「マナーゲート」を立ち上げ、主たる先導者12人を昏睡させて森の一画に拉致する。そこで殺人ゲームが始まる。生き残ったのはクリスタル(ベティ・ギルピン)ひとり。殺人チームの黒幕はアシーナだと突き止めたクリスタルは彼女の豪邸に乗り込む。ふたりが対決し、女優アクションが数分。かなり見応えがあります。富裕層と庶民階級の対立がきっかけで、異常な殺し合いが生じたというのは、右派と左派の対立で分断されているアメリカの投影でしょうが、ヒロイン・クリスタルの立ち位置からすればどっちか一方が正しくてまともなのではなく、どっちにも異常で悪質な人間がいて状況を混乱させる、大事なのは自分の冷静な判断で生き残るサバイバルだ、と映画は示唆しています▼クリスタルがアシーナを「罪のない男女を娯楽で殺している張本人」と決め付けると、アシーナは「遊びで人殺しをするなどありえないことを、本気にしたお前らバカどもが人間刈りを現実のものにした」とやり返す。アシーナは「異常者だと自分でわかっていれば異常者ではない」と思い込んでいる。クリスタルのハンドルネームはスノーボール。オーウェルの動物農場のブタの名前です。クリスタルはウサギとカメの寓話を引用し、油断したウサギにカメが勝つ、ところが家族で夕食を囲んでいる団欒をウサギが襲撃し一家を銃で殺すというオチをつけます。彼女はアフガンの兵士だった。帰米してレンタカー屋で働いていていたが、このサバイバルで久しぶりに自分に戻れるというファイターです▼アシーナは「マナーゲート」立ち上げのため軍事顧問を雇い8ヶ月特訓を受けた。女が大富豪で頭がよく、キレルと何をするかわからないといいたいのでしょうか。ハイレベルな2女優のアクションは本作の花です。ベティ・ギルピンは数々仕掛けられたアシーナの罠をひとつずつ見やぶり、偽の味方を殺し、米国大使館員の正体を暴き、プロの軍人を拷問してアシーナの居場所を吐かせる、まことに大胆な役です。自分はアシーナが言うクリスタルではなく、故郷にいる同姓同名のクルスタルがいるから彼女と間違えているのだとアシーナに釈明するが、ハイそうですかと引き下がる女なら人間刈りなど本気でやらない。どっちも異常領域の女が刺激的です。ヒラリー・スワンクはあの通り、切れ上がった鋭い目つきです。二度のオスカー受賞作や「サヨナラの代わりに」「ミッション・ワイルド」のようなヒューマンな作品以外に案外クライム・ムービーが多いのは、たぶんこの視線のせいかも。大の親日家で「ウドン、タコヤキ」が大好きな庶民派です。

 

あなたにオススメ