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家族の修羅場

2021年6月3日

特集「家族の修羅場」③
ロンリー・ハート(1986年家族映画)

監督 ブルース・ベレスハート

出演 ダイアン・キートン/ジェシカ・ラング/シシー・スペイセク

シネマ365日 No.3585

美味しいケーキ

ミシシッピーの小さな町。マグラス家の三姉妹が事件に遭遇する。長女レニー(ダイアン・キートン)、次女メグ(ジェシカ・ラング)、三女ベイブ(シシー・スペイセク)というオスカー三女優の共演だ。レニーからの電話でロスから急遽呼び返されたメグは、ベイブが夫を銃で撃ち拘留中だと知らされる。彼女ら3人は、父親が母を捨て、母は神経を病み地下室で首を吊ったという過去を共有する。母の自殺を発見したのはメグ。メグは父親が嫌いだった。父は母を殺したのも同然だと今も信じている。歌手を目指し、恋人も置き去りに故郷を後にした彼女は奔放な女と見られているが、母親の遺体発見の後行動が奇妙になり、祖父の書斎でおぞましい本を耽読するようになった、とこれはベイブの話である。ベイブが夫を撃った理由は暴力だ。弁護士は過去4年間にベイブが受けたカルテを姉たちに見せた。自分の冗談に妻が笑わなかっただけで口汚く罵り、残忍な行為で苦しめた。「妹にひどいことを。殺してやる」とメグは叫ぶ▼しかし本当の理由は他にあった。ベイブは近所の黒人の少年ウィリー・ジョーと「ただ寂しかった」からガレージで「セックスみたいなことをした」。庭でウィリーと笑いあっていたら夫は少年を殴り倒し二度と来るなと追い払った。「私は自分の頭を撃とうと思ったけど気づいた。ママも自殺したくなんかなかった。殺したかったのはパパだった。私も自殺などイヤだ」そこで夫を撃つことにしたのだから、この妹の思考はかなり飛んでいます。レニー。「しなびた卵巣」が原因で子供が産めなくなった。それがコンプレックスとなり、男性と親しい付き合いができない。ダイアン・キートンは「チア・アップ!」でも末期卵巣ガン患者をやっています。本作へのオマージュでしょうか。レニーは施設で寝たきりの祖父の介護を1人でやっている。婚期を逃してきたのは「卵巣」より「介護」だ。彼女はでもいちばんしんどい理由を口にしない▼元カレと再会したメグは妻子ある彼と湖畔で一夜を踊りあかしたというのが本人の弁。近所の主婦はメグを「安物のクリスマスの飾り物、低級な売女だ」と言うが「それ以上妹を悪く言わないで」とレニーは穏やかに頼むが、言いやめない女をホウキで追回し腕ずくで叩き出す。レニーはいつももっさりした作業着(母親のお古)をまとい、うつむいて土をほじくり返し、実をならせるのが無上の楽しみだ。妹たちに尻を叩かれ、過去唯一のボーイフレンドだった男に会いたいと電話する。メグは売れない歌手を諦め故郷に残るつもりだが、先行きあてはない。今の男とむし返す気もない。ベイブは夫と示談。刑務所行きは免れたが、少年はニューヨークに追放された。ブルース・ベレスフォード監督の「ドライビングMissデイジー」や「ラストダンス」「ダブル・ジョパディ」に比べたら小品です。ヒロインの3人とも、だから幸福になるという保証はどこにもない。田舎町で代わり映えのない日々を送り、犬猿の仲の主婦たちとやり合うのだ。次女と三女は2日遅れで長女の誕生日を祝う。誰も自分の誕生日を覚えてくれていない、と思っていた一昨日のレニーは、ケーキにローソクを1本立て「ハッピー・バースデー・トゥ・ミー」とキッチンで寂しく歌った。普段はキライな近所のイトコでも、持ってきてくれた安物のチョコレートが嬉しかった▼でもこの日は違う。妹2人が大きなケーキをこしらえ、庭仕事する姉を呼び、3人は大はしゃぎしてケーキにかぶりつく。なんだかんだトラブルと修羅場はあってもなんとかやっていくのが人生だ。ガブリ。美味しいケーキはそう励ましてくれる。

 

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