女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

家族の修羅場

2021年6月6日

特集「家族の修羅場」⑥
沈黙のジェラシー(1998年 犯罪映画)

監督 ジョナサン・ダービー

出演 ジェシカ・ラング/グウィネス・パルトロー

シネマ365日 No.3589

死んで貰います

生まれてくる赤ん坊を奪われる映画というのは幾つかあります。「ローズマリーの赤ちゃん」(主演ミア・ファーロー)「ゆりかごを揺らす手」(レベッカ・デモーネイ)「屋敷女」(ベアトリス・ダル)など。奪われる側の母親の恐怖、戦慄そして戦う勇気が前面に描かれ、難しい役をそれぞれの女優が好演していました。奪う方はどうか。レベッカ・デモーネイの狂気、ベアトリス・ダルの哀感に母性の強さと切なさを覚えました。本作はどうか。嫁姑というどこの家庭にも多少はあるトラブルをとびきりの犯罪映画にしたのはこの女優、ジェシカ・ラングです。やさしさの奥に潜む悪意、寛容の裏にある謀略、邪魔者は消す野心と実行力。敵に回したくない、どころかあらゆる努力で接触を回避したい女性です。彼女に対立するクジ運の悪い嫁がグウィネス・パルトローです。勇敢に立ち向かい最後は勝利するのですが…ちょっと言いにくいのですが、毒母の方がかなり魅力的だと共感した女性もたぶん、おられると思うのです。男性は「とんでもない女だ、コテンパにやっつけてしまえ。グウィネス・パルトローがジェシカ・ラングにラストでかますビンタにすっとした」と拍手するでしょうが、女性の見方にはもっと微妙なものがある▼ジャクソンは牧場の後継者、母マーサの一人息子だ。母親の溺愛はほぼセックスのない夫婦関係に等しい。牧場を継ぎ一緒に暮らしたいと熱望しているが、息子は嫁ヘレン(グウィネス・パルトロー)の意見を取り入れニューヨークに住むという。ヘレンもしたたかな女性で、広大な牧場の資産を横目に気が変わり、ババ抜きで牧場を仕切ろうと持ちかけ、息子はその気になる。ところが高級施設に入所している祖母が、マーサは牧場を乗っ取るためジョナサンの父親を殺したと教える。ヘレンはマーサが不気味になり、やっぱり牧場はイヤだと言い出すと、ジョナサンは「ママ、ごめんな、ニューヨークに行くよ」と翻意、煮え切らないのであります▼マーサの凄さは単なる嫉妬ではなく、息子と嫁の間に産まれた男の子を取り上げ、用済みの息子夫婦、できうれば息子1人がニューヨークでも北極でも行けばよい、自分は住み慣れた牧場を独占するという、スケールの大きな魂胆があるわけです。目的達成のためには手段を選ばない。ジョナサンが馬主の品評会に出張中、馬の陣痛促進剤をイチゴケーキに混ぜてヘレンに食べさせ出産を早める。産みの苦しみにのたうつヘレンに付き添い「陣痛は痛いものよ」とケロり、編み物をしている。おお、いよいよだ、マーサは編み物を放り出しベッドに飛んでいくと「いきむのよ、いきんで、いきんで、もっと、もっとよ」声を大にエンヤコラ。ヘレンは激痛と激怒で「いきんでいるわよ、クソ女!」。負けていません。マーサは産まれた赤ん坊を抱き気絶同様のヘレンのシーツをしげしげと眺め「出血がひどいわね」その口調には「なんで死ななかったのかしら」という口吻がある。最後の仕上げとして「仲のいい家族は理想。でも現実には無理。か弱いあなたが自宅で産むなど意地をはるからこんな目に合うのよ。私はベストを尽くしたわ。でもあなたを生かしておけば恩を忘れてどんなデタラメを言いふらすかしれない。赤ん坊は私とジャクソンで育てるわ。これは致死量のモルヒネよ」死んで貰います。ヘレンの腕にチクッ。帰ってきたジャクソンがドアをドンドン、針がそれて全部注入できずヘレンは助かる▼ジャクソンとヘレンは赤ん坊を抱いて牧場を出る。計画が水の泡になったマーサはどうするのか知らない、とりあえず今はヘレンにビンタ食らって床にへたり込んでいる…。グウィネス・パルトローもジェシカ・ラングを相手に引けをとらず、けっこう功利的な嫁を熱演しました。

 

あなたにオススメ