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特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

2021年6月9日

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」①
博士と狂人(上)(2020年 事実に基づく映画)

監督 P・B・シェムラン

出演 メル・ギブソン/ショーン・ペン/ジェニファー・イーリー/ナタリー・ドーマー/スティーヴ・クーガン

シネマ365日 No.3592

常識から外れた生き方

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

完成までに70年、世界最高の英語辞典に一生を捧げた男、マレー博士(メル・ギブソン)と、精神を病む外科医、マイナーの友情がテーマだ。メル・ギブソンとショーン・ペンのメガトン級の共演が話題になった。外科医として従軍した南北戦争でのトラウマを抱えたマイナーは、精神病院の治療によって廃人同様にされかかった時、マレーが時の内務大臣、ウィンストン・チャーチルにカチコミをかけ国外追放という形で釈放を取り付ける。その一方で、マイナーの錯誤によって夫を射殺された未亡人イライザ(ナタリー・ドーマー)とマイナーのプラトニックな関係や、マレーの妻エイダの力強い献身、あるいは病院の看守長、マンシー(エディ・マーサン)との友情あり、ラブストーリあり、全編にサスペンスさえ覚えさせる力作です▼その力作に水をかけるつもりはありませんが、でもこのマレー博士、努力と勤勉を絵にした叩き上げの言語学者ですが、現実のピンチに会うと必ず妻に助けられる果報者でもあります。安定した生活を捨て、ロンドンからオックスフォードへ引っ越す時、夫は大仕事に興奮し、はしゃぐが「迷いと恐れを捨てると約束してほしいの。信念を持ってやり遂げて」とエイダが釘をさすのは、いざとなれば頼りないところのある夫への危惧とも取れます。彼女と子供達は辞書作成別室で夫の作業を手伝い、文字どおり家族総出でした。辞典の記念すべき第1巻が刷りあがりましたが、ウィーン大学やフィガロ紙から不備を指摘され、マレーを理事会から追放する動きが起こります▼理事のひとりフレディ(スティーヴ・クーガン)は、編纂の責任者に学士号もないマレーを抜擢した男です。スタートして20年も経っているのに辞典の編纂には進捗がなかった。もっとスピーディーに、もっと的確な方法で完成させる「やわらか頭」が必要だ、フレディはそう考えた。しかし栄誉ある辞典編纂の責任者に、名もないマレーが就任したことに反対は多く、校正の見落としを槍玉に上げた。フレディは自分が辞任することで責任を取り、その代りマレーに業務を継続させます。後ろ盾を失ったマレーにまたもやピンチ。「アメリカ人の殺人犯が辞典編纂に加わっている、イギリスの偉業を汚す」とクロニクル紙がスッパ抜いたのです。「すまない、フレディ、夢は破れた。神が創生した万物の意味を伝える本を、あらゆる言葉の歴史を記録したかった。少なくとも英語の部分を。全てを捧げてきたのに」と打ちひしがれるマレー。フレディは言います。「君は土台を築き上げた。次の世代が君を指標にして終わりなき旅を引き継ぐ。ジェルとジョウェット(マレー追い落とし派)を出し抜く名案がある。あとは私に任せろ」なんと力強い味方でしょう。妻は「試練を与えられた時は屈しない覚悟が求められる」ときっぱり。そしてマレー解任を決める理事会に姿を現したのです。「夫の欠席をお詫びします。代わりに私からお話があります。夫を浅はかで頑固で愚直だと思う人もいますが、そうではありません。彼は無数の選択肢の中から自分が正直に生きることを選んだのです。私の夫と心の病を抱えた殺人犯が力を合わせ素晴らしい宝物を私たちにくれた。常識から外れた生き方を認めてほしいのです。自分らしくあることを罰しないでください」。理事たちはタジタジ。

 

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