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特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

2021年6月10日

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」②
博士と狂人(下)(2020年 事実に基づく映画)

監督 P・B・シェムラン

出演 メル・ギブソン/ショーン・ペン/ジェニファー・イーリー/ナタリー・ドーマー/スティーヴ・クーガン

シネマ365日 No.3593

愛があれば愛を呼ぶ

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

マレーはイライザに愛を覚え、彼女の愛をも感じたことで罪悪感にさいなまれていました。誤ってとはいえ彼女の夫を殺した、この上彼女の愛を得るならば、夫を二重に殺すことになる。マイナーは自分の性器を切り落とします。彼の精神疾患は重症化する。院長は新しい治療法を採用した。坊主頭に剃り上げ、電流を通す拷問のような処置だ。面会に行って顔も識別できず廃人同様になったマイナーにマレーは震撼する。なんとかこの病院から出したい。フレディは政治家を動かしたが、うまくいかなかった。政界でも「アメリカ人」に関わることはタブーとなっていた。頭を抱えるマレーに、再びフレディは策を授ける。内務大臣への直訴だ。アポなく執務室に入ったマレーは追い出されかけたが出口のドアで振り向き、はるか向こうのデスクにいる大臣、ウィンストン・チャーチルに大声を張り上げた▼「大臣、あなたの決断はあらゆる人に影響する。複雑で痛ましい状態にいる人にも。全ての人は尊重されるべきだ」。チャーチルは黙っていたが別室にマレーを待機させ、足早に入室すると早口で伝えた「釈放はしない。首相に却下され民衆に非難される。しかし厄介払いの手段を君の辞典で見つけた。マイナーを国外退去させよ。当局から送還命令を出させて、アメリカに自国民の処遇を任せる」。あっという間の解決だった。精神病院を退院するマイナーをマレーとフレディが見送りに来る。看守長のマンシーが立ち会った。彼は院長の治療法を疑問視し、極秘にマイナーとイライザに面会の便宜を図ってもいた。「彼女に釈放を伝えてくれ」「わかった」。男たちは約束して別れた。会うことはなかった。マレーは改めてオックスフォード英語辞典最高責任者に任命された。1908年マレーはナイトとなった。辞典は「T」まで編纂された。1915年脳梗塞で死去。マイナーはアメリカに戻りワシントンD.Cで総合失調症と診断、1920年自宅で肺炎により死去。183万の引用と41万語を収録した初版12巻は1928年に完成。編纂を始めて70年後だった▼主人公ふたりの苦闘もさることながらそれを支えた脇役に感動した。フレディが好きだわ。彼がいなかったら辞典は日の目を見なかったのよ。無名のマレーに全権を与え、無理解な連中の盾となり、解雇のピンチには自分が引責辞任して彼を守る。マレーが泣きついてきたら「俺に任せろ」。あらゆる人脈を頼ってマイナー釈放に動き、最後はチャーチルに直訴という強硬手段を選ぶ。辞典完成の影の立役者です。ロマンス編も加えておこう。マイナーと面会を重ね、彼のやさしさに気づいたイライザは、いつしか憎しみが消え愛するようになる。彼女は字が書けなかった。マイナーが読み書きを教え最初に書いた文字は「私はできる」だった。看守長の計らいで面会したイライザはマイナーにメモを渡した。「愛があれば、その先は?」。マレーはそれを妻に見せる。エイダはピンとくる。「愛があれば、その先は? 答えはなんだと思う? 愛があれば愛を呼ぶ、よ」。ふたりの主人公も立派ですが、私は脇を支えた妻と親友に拍手。あと1人、ヒューマンな看守長役がエディ・マーサン。「アトミック・ブロンド」でシャーリーズ・セロンが決死の任務で守ろうとしたユダヤ人を演じました。

 

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