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特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

2021年6月12日

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」④
クロスマネー(上)(2018年 劇場未公開)

監督 コルド・セラ

出演 エマ・スアレス

シネマ365日 No.3595

金とともに去りぬ

特集「しっとりと水無月やよし6月のベストコレクション」

中年のシングルマザー、ラケル(エマ・スアレス)が福祉事務所の担当者に3万5000ユーロの賄賂を渡せば、娘の養子縁組手続きは無効にしてくれる、娘を養子にやらせたくない、取り返したいからその金を融資してほしいとラケルは銀行の支店長に頼み込む。もちろん「ノー」だが、担保として両親の家の権利書を持ってきた、返済できない場合は差し押さえてくれていいと粘る。本店の出世コースに野心がある支店長は、点数を稼ごう(返済できっこないと見ている)と融資を承認する。ラケルはどうしても明日中に自分の口座に振り込んでくれと強引に頼む。時間切れだがなんとかしようと支店長は鷹揚に頷く。手続きの途中で二人組みの強盗が押しいった。行員と客、合わせて7人が人質となる。二人組みは刑務所を出所したばかりのローラとジョナンだ。ローラはジョナンをボスと呼ぶが指示を出すのは彼女で、男はヤク中のうえ糖尿で甘いものが切れるとイライラする。どう見てもプロの強盗の面構えではない▼銀行の閉店は6時だ。それまでに送金しないと金は相手の手に渡らない。よって娘は他家に引き取られてしまうのだ。ラケルは強盗相手に打開策を考える。住民の通報によって銀行は警官隊に包囲された。交渉人ガライから速やかに投降せよ、との通告が電話で入る。ローラが電話に出ようとするとラケルが止める。「私が代わりに出る。警察は電話の声の情報をもとに捜査を開始する。録音を全国の刑務所に照会しあなたたちを割り出す」。ラケルは妙に詳しいのである。ローラはラケルに指示されることが忌々しいが、尤もではあるので電話に出す。「私は人質のひとり。犯人の代わりに話します。一字一句書き取ってください。人質は従業員5人に客が1人。1時間ごとに電話をくれたらその都度状況を伝えます。4時きっかりに」。「変だな、話し方に違和感があるな」とガライは助手のエヴァに言う。4時の電話でローラは食べ物と飲み物をよこせとラケルに言わせる。4時きっかりにガライから電話が入った。「一字一句書き取ってください」と再びラケル。「ピザを2種類。ビールとソフトドリンク。ドーナツを2箱。私にはコーヒー。でも注意して。ミルクは無脂肪。白い砂糖も忘れずに」。一字一句の指示が暗号のキーだった。ガライの解読によれば「4番目の言葉に注意。4番目の言葉を選んでつなぎ合わせると、犯人は2人、女は片方の目が白い」と、まずわかった▼ピザをとりに行った女子行員が、そのまま警官隊に向かって走り脱出に成功する。彼女の証言によって具体的な現場の状況がもたらされたのだからラケルの暗号通信は無駄だったわけだ▼「IQ167」のラケルの天才的な頭脳の見せ場はあまりないように見える。彼女は「アトミックブロンド」のシャーリーズ・セロンや「ワンダーウーマン」のガル・ガドットのような颯爽としたヒロインではない。うらぶれた中年詐欺師の実像が明らかになる。強盗が素人すぎるとか、高いはずのIQの頭のよさが生かされていないとかで、本作は低評価だった。でもそうは思えない。どことなくもっさりした女詐欺師が、マフィアの手から娘を取り戻すために、場当たりであろうがでまかせであろうが、知恵を絞って強盗と一時的であるにせよ共存共栄を図り「金とともに去る」脱出劇だ。カッコよくはないヒロインに、大いに共感できるストーリーなのだ。

 

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