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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2021年7月13日

特集「映画に見るゲイ14」331
ダブル・サスペクツ(上)(2019年 劇場未公開)

監督 アルノー・デプレシャン

出演 レア・セドゥ/サラ・フォレスティエ/ロシュディ・ゼム

シネマ365日 No.3626

同性愛も普通の愛

特集「映画に見るゲイ14」

ある種の映画、小説は同性愛をマイノリティの苦しみとして描くことで特殊化し、日常性を奪ってしまった。愛は本来、あらゆる関係の中で成り立つ、隣人としての日常的な在り方の一つだ。ほとんどの作品の「特殊化」にウンザリしがちだったときに、同性愛もまた共に築き、壊れ、膿み、逃走もし、辟易もして、お互いを裏切りにも至るメカニズムが働く。そんな「普通」のことを描き込んだ本作が新鮮でした。アルノー・デプレシャン監督は「クリスマス・ストーリー」にも見られるように、シスターフッドを巧みに、口当たりよく編曲した監督ですが、今回は全然ちがう。もっと冷たい同性愛の「なれの果て」を、詩的な残酷さで際立たせています▼舞台はルーベ。フランスとベルギーにある国境の町。主人公はルーベ警察署長のダウード(ロシュディ・ゼム)。監督は彼の出身地でもあるルーベをこう語らせる。「重苦しく暴力的な街だ。市内を横切る水路。巨大な市庁舎。中産階級は姿を消し街は破綻している。75%が問題区域であり、人口の45%が貧困に苦しむ。冬なのに空気は湿っぽくて生暖かく、沼地から引き出された街のようだ。ポーランド人、イタリア人、アルジェリア人、ポルトガル人。大昔に産業で栄えたことなど誰も知らない。自尊心と恥が入りまじり、残ったのは貧しさと衰退の記録だけ」。そんな街で放火殺人事件が起きた。容疑者は近隣に住むシングルマザーのクロード(レア・セドゥ)と同棲する女性マリー(サラ・フォレスティエ)。刑事の聞き込みにも非協力的だ。同時進行で強盗、家出娘の捜査がかぶる。署長は自分の家族を北アフリカに返し単身街に残っている。彼の育った町であり、離れる気はない。ダウードには服役中の甥がいる。時々面会に行くが甥は面会を謝絶する。この街の住人と同じく、ダウードにも人に言えない背景があるらしい。殺されたのは80歳の女性リュセット。ベッドで首を絞められた形跡があり、死因は窒息死だった▼ダウードは放火殺人の容疑者をクロードとマリーに特定する。二人の供述は食い違う。聴取に当たった刑事は「クロードはお前が殺したのだと言っているぞ」とゆさぶりをかける。「2階の寝室で何があった?」「殺すのはクロードの考えだったの。精神安定剤を薬棚で見つけ、それを飲ませ二人で首を絞めた」。別の部屋ではクロードが異なる回答をしている。「体調の悪いリュセットが心配だから家に行った」「マリーは君が殺害に関与したと言っている」クロードは動じず「マリーらしいわ。ウソばかり」と吐きすてる。「どうしてだ。マリーは君に恋しているはずなのに、君が共犯者だという理由は?」「わからない」「事実だからだよ!」あるときは高圧的に、あるときは穏やかに、執拗に繰り返される質問にマリーはもうろうとしてくる。

 

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