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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2021年7月16日

特集「映画に見るゲイ14」334
愛について、ある土曜日の面会室(下)(2012年 社会派映画)

監督 レナ・フェネール

出演 ファリダ・ラウアッジ/レダ・カテブ/デルフィーヌ・ドルカーロワ/マルク・ラウベ

シネマ365日 No.3629

愛の後ろ姿

特集「映画に見るゲイ14」

アントワンはロールが妊娠したことを知っている。面会室での反応で、男にひとつも思いやりのないこともわかった。生活力も職業も、家庭愛もない男の子を産むのかどうか、アントンはそれに触れない。ロールはその日、面会に来たものの男に会いたくないと言って廊下で待っていたのである。面会時間が終わって、「行くぞ」とアントンは声をかけ刑務所を出た。ステファンはギリギリまで身代わりを引き受けるか迷っていた。ピエールの手配した女が騒動を起こし看守の注意をそらせている隙に、ジョセフは「いまだ、立て」と指示し服を取り替えようとするがステファンは立たない。「何をしている!」強い口調の小声で言うジョセフだがステファンは動かない。「覚悟が決まっていないのだな」ジョセフは諦める▼直後、フランソワが錯乱した。看守たちが移動する。ガバッと上着を脱いだステファンは一瞬でジョセフと入れ替わる。三組の面会者たちは30分の面会時間を終え刑務所の外に出た。ピエールが車でジョセフを迎えに来ていた。ロールは刑務所の塀のそばに立ち、物思いにふけっている。アントンと簡単な挨拶を交わして歩き出した。ゾラは面会者たちがそれぞれに立ち去った刑務所の前を、ひとり歩いて去る。誰がどうなるのか物語は触れない。ここにあるのは愛の後ろ姿だ。後ろ姿だけが愛の形だとでも言うように、レナ・フェネール監督は見送っている。彼女は28歳だった。内省的な洞察に長けたこの監督は、熱愛でもなく純愛でもなく、相思相愛でもなく、温かくもなければ喜びもなく、かといって絶望でもなく、ただ何もかもが通り過ぎたあとの愛の姿を描こうとしている。初監督作品であり、資金集めに約一年。一年で撮影にこぎつけたのは幸運だったと語っていた。名前だけで出資者を安心させられる大物は集められなかったかもしれないが、今から見れば相当の陣容だ。ステファン役のレダ・カテブは「黒いスーツを着た男」「ゼロ・ダーク・サーティ」「永遠のジャンゴ」と出演が続き、ピエール役のマルク・ラウベは「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」もさることながら「薬指の標本」の謎のいやらしい標本技師が忘れがたい。口汚く男を罵りながら、結局は一緒にいることを選ぶエルザ役のディナーラ・ドルカーロワはカンヌ出品作の常連。「動くな、死ね、甦れ」「やさしい嘘」「フリークスも人間も」など、カンヌを始めとする映画賞で高い評価を受けた。キャスティングの時はすでに脚本は完成していたから、彼らは若い無名の監督の処女作を、内容に納得した上で受けたと思われる。

 

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