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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2021年7月17日

特集「映画に見るゲイ14」335
風たちの午後(1980年 ゲイ映画)

監督 矢崎仁司

出演 綾せつ子/伊藤奈緒美/杉田陽志

シネマ365日 No.3630

片思いは永遠です

特集「映画に見るゲイ14」

疑問。矢崎仁司監督が撮ったのはどうして「女を好きになった女」で、「男を好きになった男」ではなかったのでしょうね。恋愛で常軌を逸するのは「男と男」より「女と女」の方が描きやすかったから? そういう視点から見ると本作は同性愛という括りからスルスルと滑り落ちて、好きな女性・美津(伊藤奈緒美)の代わりに(彼女は子供が産めない)、美津が好きな男・英男(杉田陽志)の子供を産むという結果をヒロイン夏子(綾せつ子)は選択する、という報われない片思いの映画ということになります。40年前に製作された伝説のフィルムで、古さがないのは驚きでしたけど。けど…という歯切れの悪さは登場人物たちが成り行きに「流されていく」だけで、芯になる物語性が脆弱だと感じたからかもしれません▼夏子は英男の子を妊娠し、美津と別れしがない内職をしながら臨月に至る。美津は夏子と一緒にアパートに暮らしている。英男が来た時はハンカチを窓の外に出すのが合図。美津の誕生日を祝おうとプレゼントを買って帰った夏子は窓を見上げ寂しくアパートを去り時間を潰す。美津は美容師で、夏子は保育士だ。それぞれ自立できる仕事がありながら、夏子は美津を独占しようと英男と関係する。英男というのが女癖の悪いクズ男で、美津も心が索漠としている。気だるそうに洗濯物をたたむ、自分にやさしくする夏子が疎ましくなる。夏子が英男と寝たと知って同棲を解消しホステスとなる。大きなお腹を抱えて夏子は美津の後をつけまわし、妹だと偽り管理人に部屋を開けてもらうと、バラの花を敷き詰める。やがて赤ん坊の泣き声が聞こえる…本作はものすごい高評価で絶賛だったと言ってもいい。監督が24歳の時の処女作だから、実験的で観念的で、生活臭の乏しい映画だとは認めたい▼叙情性豊かで、日々の暮らしに充実感のない美津の虚無性は共感を呼ぶだろう。とはいえ夏子の大胆な選択に感動した人、いる? こんな無茶する女っているかしら。先述に戻るけど、だから主人公は女なのね。男同士が同棲していて1人がもう1人を片思い。その男に愛する女がいるから彼女を妊娠させて子供を産ませ、恋人男にプレゼントするなんて図柄だと、「お前、アホか」で赤ん坊、突き返されそうだもの。美津は整理整頓の悪い女で、部屋は散らかり放題、流しには汚れ物がたまり、水道の蛇口からは水滴がポタポタ。夏子は(相変わらずね)というふうにちょっと笑う(早く栓、閉めたれ)。しかも美津がゴミ箱に捨てたゴミ袋を拾い上げ、部屋に撒き散らかし、食べ残しのリンゴの芯をかじり、ゴミの中に鼻を突っ込むのだ。ああ、おぞましい。これが純愛というなら、純愛やりたい人、どうぞ試みて。夏子は保育所も辞め、しがない内職で糊口をしのぎ出産を待つ。愛が動機なら何をしてもいいなんて見方は、心やさしい女をトチ狂わせる理由にはならないわよ。ひとつも古くなっていない? そらそうよ。片思いとハズレの愛の悲しみは永遠なのよ。

 

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