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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2021年7月19日

特集「映画に見るゲイ14」337
スルースSLEUTH探偵(下)(2007年 ゲイ映画)

監督 ケネス・ブラナー

出演 マイケル・ケイン/ジュード・ロウ

シネマ365日 No.3632

情痴に滑り込む男

特集「映画に見るゲイ14」

電話が入る。マギーからだ。マイロが答える。「すべて順調だ。彼(ワイク)は僕を愛している」「妻はなんと?」「離婚したいと言っている」「私の提案はどうだ?」「いいね。世界中に行きたいところがいっぱいある」「私は女王の友人だ。君の望みを叶えるのに不自由はない。2人で楽しく暮らそう」。マイロもしたたかな男です。「僕に親切にしてくれなければダメだ。僕は今、一杯飲みたい。持ってきてくれ。ウイスキーだ」。底意地の悪さでは老練な作家に負けていません。ジュード・ロウが綺麗なだけにいやらしい目つきで、自分に入れあげている(ト思う)老作家をいたぶる。(なんだと)という腹立ちと当惑がワイクの目に浮かぶが、「僕が飲み物を頼んだ時はもってこい。あんたの意図はわかるよ。寂しいのだろ。誰かに欲望を満たしてもらいたいのさ」▼マイロ続けて「僕はいつもリッチな男に惹きつけられた。老人のタマを金のために弄んだ」「君は女じゃない」「女だったかもね。その昔は。あんたのベッドを見せてくれ。はっきりさせたい。あんたの方が大きいか、比べてみてもいいか。これか。奥さんに童貞を奪われたベッドだな。僕をそんな大切な場所に入れてくれるなんて」。マイロ、ふくふくしたベッドに横たわり、頬をスリスリ。ところがワイクが重なろうとすると「僕に触るな。僕は完璧なマトモ人間だ。あんたは危険なアバズレだ。マギーの伝言がある。ここに戻るそうだ。歓迎してやれ。彼女はあんたの金を愛している。さよなら、ダーリン」。マイロは高級なコートを羽織ってクソていねいに一礼する。コートを翻し帰ろうとするマイロを、今度こそ実弾の入った拳銃でバーン! マギーの車が到着した。エンドだ。ゲイ関係のエピソードが唐突で戸惑いますが、ゲイ落ちさせるのが最も説得力のある締め方だとケネス・ブラナー監督は考えたのでしょう。それに応えて、特にマイケル・ケインの愛の口説きが切なく迫ってきます。どこまでマイロを本気で愛していたのか、口にした言葉はみな嘘っぱちで、彼を籠絡してその場をしのぐだけだったかもしれませんが、マイロの突きつけるセリフがとんがっていて、金も名誉も出版界でのスターにもなったが愛の対象だけがない、孤独な老作家の肺腑をえぐります▼登場人物ふたりだけのワン・シチュエーションだけにセリフのやり取りがキモですが、観客をはめるための状況転換が目立ち、2回線でマイケル・ケインがやっつけられるところから失速が目立ちました。しかし転んでもただでは起きないというか、ジュード・ロウがマイケル・ケインに宝石を与え、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、リングをつけさせ、鏡の前に座らせる。マイケル・ケインが道化のような自分を見つめ、嫌悪どころかうっとり。「このブレスレットは僕に似合わないと思う。イヤリングは外してくれ」と注文をつけ、するすると情痴の世界に滑り込んで行く老いた男のエロチシズムをじんわりと滲出させます。騙し合いには違いないのですが、相手をやっつけながら微妙に我が陣地に引き込もうとする駆け引きに、アブナイ男同士だけに通じ合う危険な妖しさがありました。

 

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