女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

銀河流れる7月のベストコレクション

2021年7月22日

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」③
モーガン夫人の秘密 (2019年 劇場未公開)

監督 ジェームズ・ケント

出演 キーラ・ナイトレイ/ジェイソン・クラーク/アレクサンダー・スカルスガルト

シネマ365日 No.3635

不倫の秀作あれこれ

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」

豪華な俳優の割には肩透かしだったわ。イギリス人のヒロイン、レイチェル(キーラ・ナイトレイ)が、不倫に陥った相手、ドイツ人のステファン(アレクサンダー・スカルスガルト)に、アルプスの麓に買った土地に一緒に行ってやり直そうと持ちかけられ、あっさり承知するのにあっけにとられたわ。隣人に友人はおろか、顔見知りひとりいないアルプスくんだりまで行って、燃え上がった恋は早晩オジャンになると、読めない人生キャリアではないと思うのだけど。第二次世界大戦終戦後のハンブルグ、ドイツ人建築家ステファンの趣味のいい広い屋敷を接収したイギリス軍。ヒロインの夫は英陸軍大佐ルイス(ジェイソン・クラーク)だ。ふたりの息子はドイツ軍のロンドン空爆で死に、ステファンの妻はイギリス軍のドイツ爆撃で死んだ。どっちもが最愛の息子と妻を失った。導入部の荒廃したハンブルグの瓦礫の下から遺体を探す遺族の光景など、リアルで重厚なのに、ラブロマンスとなってからが軽くなった▼レイチェルとルイスの夫婦仲が亀裂したのは息子の死から。11歳だった息子の死にレイチェルは自分の目が行き届かなかったためだと自らを責め、息子を溺愛していた夫が(君のせいで息子は死んだ)と責めているように感じている。でも夫は夫で「君を見ていたら息子を思い出す、君の声、君の匂い全てが息子の面影を呼び覚ますのが辛い」から避けていた…夫は夫で苦しんでいたのだとわかった妻は、駆け落ちを中止、駅頭から屋敷に引き返し夫の胸に飛び込む。ルイスという男性は敗戦国の復興に献身するヒューマンな軍人です。劣悪な環境の収容所キャンプよりここにいたらいいと、接収した屋敷からステファン父娘を追い出さず屋根裏部屋を提供するくらいだ。レイチェルは息子を殺した敵国の人間に情けは無用とばかり、初対面からツンケンしていたが、ステファンもまた戦争の犠牲者だとわかって心を解く。おまけに彼は美術品にも音楽にも造詣が深く、知的でフィーリングが合う。旦那との関係が寂しかったレイチェルが、なだれ落ちるのは時間の問題だと早々にわかってくる。ところがとどのつまり「いいえ、私は夫とやり直します」。男ふたりが気の毒になってくる。夫とステファンはレイチェルに振り回されて映画はエンドとなるのだ▼不倫の着地点を非情なまでに描き切った「アンナ・カレーニナ」(キーラ・ナイトレイ主演だった。えらい違い)、哀切な詩情をたたえた出会いと別離、かつヒロインの死後、彼女の愛の深さに「アフリカまでぶっ飛びそうなセックスですって!」子供達をさえ驚嘆と羨望に陥れた「マディソン郡の橋」。ミステリー仕様がうまかった「ガール・オン・ザ・トレイン」、ヒロインのビッチ度全開で盛り上がった「ゴーン・ガール」、結婚生活を清算し、女性をパートナーに選んで人生を再構築する「キャロル」。ざっと並べてみただけでも、ヒロインの人間像と物語の仕掛けにおいて、いかに本作がお手軽だったかを思わざるをえない。

 

あなたにオススメ