女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

銀河流れる7月のベストコレクション

2021年7月23日

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」④
クレイジー・リッチ! (2018年 家族映画)

監督 ジョン・M・チュウ

出演 コンスタン・ウー/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ヨー/ニコ・サントス/オークワフィナ

シネマ365日 No.3636

私はわたし

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」

レイチェル・チュウ(コンスタン・ウー)は中国系アメリカ人。ニューヨーク大学の経済学部教授。恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)が故郷シンガポールで結婚式の付添人をやるため帰郷しなければならない、君と交際1年、そろそろ両親に紹介したい、というので一緒に行くことにした。彼の一族はシンガポールで知らない人のない大富豪だと着いてから知った。ニックは御曹司。玉の輿狙いがワンサといて、レイチェルは嫉妬と羨望を浴び、それは排斥に変わる。ニックの母エレノア(ミシェル・ヨー)の目は冷たい。叔母たちはケンブリッジ大学卒。イトコたちは女性弁護士、マンションを14棟持つセレブにしてファッション・アイコン。ゲスな金満男の金融家。三流女優と浮名を流すバカ派手な映画プロデューサーと、尋常でない面々だ▼家族を取るか、レイチェルを取るかの岐路に立たされたニックは、全財産を捨てニューヨークでレイチェルと暮らす道を選ぶロマンティック・ラブストーリーの王道だ。レイチェルはセレブたちの底意地の悪いイジメにあう。身分違いの格差婚だと露骨に嫌がらせを受ける。ありふれた紆余曲折があり、めでたくゴールインするのはかなり退屈なストーリーだが、本作で好きになれるキャラが3人いた。ニックの母親エレノア。結婚のためケンブリッジを中退。姑=ニックの祖母=のメガネに叶わず、家柄が合わないと格下に扱われ、お家大切と忍耐と精励の結果、総帥である祖母に次ぐナンバー2の位置にある。レイリェルに辛く当たるが私情による意地悪でなく彼女がアメリカ人だから。資本主義史上社会の人間は、伝統と格式を受け継ぐ当家の嫁になるのは難しいと踏んでいるクールな女性。「グリーン・ディスティニー」「バビロンA,D」「モーガンプロトタイプL—9」などでおなじみのシャープな容貌がシーンを引き締める▼オリヴァー(ニコ・サントス)。一族の調達係。カンボジアのトラや金色の鯉を探してくる便利屋として重宝される。普段ゴミみたいに扱われているが心根のいい男。結婚式場に行くレイチェルのドレスに頭を抱え、大汗をかいてコーデュネートしてやる。そしてこのシーンがいい。彼はレイチェルをウェディング・パーティーの満座の席でこう紹介するのだ。「ニューヨークの不動産王のご令嬢です」。ニューヨーク大学教授の地位など連中は洟も引っ掛けない。しかし「不動産王の令嬢」と聞いたとたん見直す。不動産王とはウソではない。レイチェルの母は移民としてアメリカに来て女手ひとつで娘を育て、ウェイトレスをしながら不動産を学び、ニューヨークで指折りの不動産業者となった努力の人である。ニック家の価値観が何にあるかよく知っているオリヴァーの配慮ある紹介に心がほのぼのする。3人目はレイチェルの親友ペク・リン(オークワフィナ)。おおらかな父と母がいる。父「同じ大学で学びながらひとりは教授。ひとりはレスビアンで居候」。ペク・リンはへっちゃら。オリヴァーと一緒にレイチェルを変身させ「あの連中に太刀打ちできるものがない」と弱音を吐くレイチェルに「あんたは金目当てのお下品なバナナとみられている。でも実際はゲーム理論の教授だよ。それを使うのよ」と対抗手段を教える。式の招待者の中にプリンセス・インタンがいた。名からするにどこかの王女だろう。他人と一緒に座るのはイヤだと、一列を独占するワガママな人。誰の列にも入れてもらえないレイチェルが席を探していて、ふとインタンに気がついた。「あなたの少額融資についての寄稿に感銘しました」と話しかけた。「あれは酷評だったの」とインタン。「批評は間違っています。女性への少額融資によって経済は底上げされました。女性の起業を支援する重要な政策です」とやったものだからインタンは喜んで隣に座らせる。最前列だ。列席の女たちは目をそばだてる▼番外編としてやはりヒロイン、レイチェルを挙げておこう。ニックと別れて帰国を決意した彼女は、最後に言うだけは言ってやると、エレノアをアンシャン・ヒルに呼ぶ。観光名所である雀荘だ。中華街のはずれにある。麻雀対決で勝利を確信したエレノアに大技で逆転。レイリェルはエレノアにこう切り出す。「私は最初からあなたに嫌われていた。なぜですか。資産がない? イギリスの寄宿学校出身じゃない? 家が貧乏? ニックは昨日求婚しましたが断りました。彼が私を選べば家族を失う。家族を選んでも生涯あなたを恨みます。ここへ来て、あなたたちに会って、私は生まれて初めて確信しました“これが私だ”と。ニックを愛しているから母親を失わせたくない。いつかあなたの認める女性と彼が結婚した時、月下美人の咲く夜に小鳥がさえずり孫と遊べたら私のおかげです。貧乏なシングルマザーに育てられた名もない移民のおかげだと知ってください」。なんだ、かんだ、のトラブルを乗り越え、ニックとレイチェルの結婚披露宴がホテル・マリーナ・ベイ・サンズであげられる。天空を進む船のようなデザインの、船倉の部分が巨大なプールになっていることが有名。インスタ映えするシンガポール随一の名所。一泊4万円弱とか。日本とは桁はずれのセレブの世界に迷い込んで、レイチェルでなくとも目がくらむが、いやいや、そんな情けないこと言わないでおこう。アイデンティティーとは実にシンプルな「私は私」であることを思い出そう。

 

あなたにオススメ