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銀河流れる7月のベストコレクション

2021年7月25日

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」⑥
ティエリー・ドグルドーの憂鬱(上)(2016年 社会派映画)

監督 ステファヌ・ブリゼ

出演 ヴァンサン・ランドン

シネマ365日 No.3638

心が裂かれた

特集「銀河流れる7月のベストコレクション」

身につまされるわ。ティエリー・トグルドー(ヴァンサン・ランドン)51歳。長年エンジニアとして働いてきた会社を集団解雇された。失業して1年半。組合の仲間は会社を訴えてやると徹底抗戦を主張するが、ティエリーは「俺は失業したことで心が裂けた。会社の名前を聞くのも嫌だ。穏やかに生きるため自分の道を探す」と離脱した。職業訓練所の指示通りクレーン操縦士の訓練も受けたが就職口はない。妻と障害のある息子がいる。自宅で受けたスカイプの面接では「履歴書の書き方に問題がある。自己PRの欄を読んでもあなたが見えてこない」斡旋はするが採用の見込みは低いと思ってくれとつれない。銀行の融資係は「アパルトマンを売ればどうですか」と勧めるが「あと5年でローンが終わる。手放せばこれまでの苦労が水の泡だ。唯一の財産です」。ティエリーは妻と相談しトレーラーハウスを売りに出す。買い手の厳しい値段交渉にむかつき、売るのをやめる▼就活センターの模擬面接のシーンが微に入り細をうがって紹介される。担当者たちがティエリーを囲み「座った姿勢が猫背に見えて覇気を感じません」「シャツの胸が開いている。遊びに行くみたいだ」「印象の半分が姿勢で決まる。あなたの椅子の座り方は無気力だ」「笑顔がないから冷たい感じがする」。担当者の一人が他を振り返り「彼と話してみたいと思いますか」「いいえ」。「彼の目つきはどうですか」「考えこみオドオドしている。心を閉ざしているようです」「面接に集中していない」「声の調子は? リズムは?」「活気がない。モゴモゴしている」「応答が早すぎる。答えが浅いのでは」。散々な評価だったが、ようやくスーパーの監視員に採用された。店内に設置した80ヶ所のカメラで万引きを監視する。先輩が見分け方をコーチする。「客の年齢は関係ない。口の開いたバッグをカートの中に置いているのは要注意。商品を手に持ちカートに入れないのも注意人物。カップルの万引きもいる。CDは狙われやすい」。顧客だけではない。「レジ担当が全ての商品を打ち込んでいるか確認しろ」。人を疑うのが仕事だ。ティエリーは憂鬱になってくる▼息子マチューの成績が悪く教師に呼び出された。彼が志望する生物工学の専門校は難関だ。「3年になると急に成績が下がった。このままでは志望校は無理です。今学期はとにかく集中してほしい」。万引きしたし初老の男がいる。未払いの商品の代金さえ払ってくれれば帰ってくれてよい」という監視員に「魔が差した。勝手に手が動いた。金は一銭もない」「家にもないのですか。肉の代金15ユーロ」「お店の棚に戻せませんか」「生鮮食品ですからそれはできません。近くに親戚は? 助けてくれそうな人は?」家族も友人もいない孤独な老人だ。「仕方ない。通報します」「なんとかなりませんか」「ならんね」。ティエリーはそばで聞いているのが辛い。監視カメラに引っかかるのは客だけではなかった。勤続20年のベテラン女性社員、アンセルミが別室に呼ばれた。「割引クーポンで不正をしたね」「ボーナスを辞退します」「クーポンで不正をしたのに居座れると?」「私は働き者です」「でも信頼を裏切った。解雇します」。アンセルミはある日店内で自殺した。

 

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