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特集「ナンセンスは素敵だ」

2021年8月23日

特集「ナンセンスは素敵だ7」③
修羅雪姫 怨み恋歌 (1974年 アクション映画)

監督 藤田敏八

出演 梶芽衣子/原田芳雄/伊丹十三/岸田森

シネマ365日 No.3667

ニキータに先立つ16年

特集「ナンセンスは素敵だ7」

バカバカしさは映画の幸福感のひとつ、とかねがね思っていますが、心底バカバカしいのは疲れますぞ。前作「修羅雪姫」を褒めちぎったのに急転直下の感想を書くのは気がひけるが、それにしてもある種、すごいのだ。ペストにかかった医者・原田芳雄がスラム街の掃討焼き討ちで瓦礫の下敷きになり、修羅雪が探しに行くとしっかり生きており、証拠の書類を握りしめ焼け焦げひとつない。前作で両親惨殺の復讐を遂げた修羅雪は38人を殺した罪で日本を逃亡中、なのに彼女の持ち物は仕込み杖である蛇の目笠一本。ヒロインたるもの生活感ゼロが特権なのね。ふらふらと波打ち際を歩いていると、取り囲んだ警官隊が女1人にバタバタ斬り伏せられ、ここは梶芽衣子の舞うような殺陣を見るべし、というシーンであります▼運つきたとみて刀を放り投げ縛につき、死刑宣告。移送中、謎の集団が馬車を襲い修羅雪を奪う。連れてこられたのは秘密警察のボス(岸田森)の元だ。反政府主義者に近づき書類を盗み出せ、うまくいったら自由、そうでないときは死刑に逆戻り。「ニキータ」(1990)に先駆けること16年ですぞ。修羅雪は反政府主義者・伊丹十三の家に女中として住み込む。「僕は助平でして」と自認して修羅雪のお尻を触るセンセイの伊丹がいやらしくてうまい。彼は兄(これが原田芳雄)の妻と関係したものの、今はすっかり熱が冷め、兄はスラム街で「赤ひげ」をやっている。秘密警察の一員に南原宏治だ。濃い顔立ちの彼が、スラム街に侵入し、拷問にあって腕を切り落とされる。情け容赦なく人間の肉体をバラバラにするのも修羅雪映画の特徴ではありまが、なんでこんな真っ赤なペンキみたいな血が吹き出るのよ。浜辺に寄せる波が真っ赤になるほどの出血って、人間の血液量とは思えん▼しかし決定的に前作と異なるのは、修羅雪が妙におとなしいこと。不気味な怪しさを伴うのではなく、クール・ビューティーが曇っちゃったのよ。原田芳雄に恋を抱く、なんて修羅雪もフツーになったか。何でペストが蔓延したかというと、アナーキストとして逮捕された伊丹十三が散々拷問で痛めつけられ、ペスト菌を注射されて兄・原田芳雄のいるスラム街に捨てられたからだ。兄は弟を掘っ建て小屋に隔離し(無駄だと思うが)治療に当たるが感染する。本作が物足りない理由のひとつは、原田や伊丹やその妻役・吉行和子、あるいは岸田森、南原宏治というクセの強い役者に囲まれ、梶芽衣子の影が薄くなったことだ。「脇」なのである。殺陣は例によって美しいが、海千山千のいやらしい男たちと、ズパリと脱ぐ吉行に押されたのは残念ね▼最後の乱闘シーンは雪降りつもる神社の境内。死にかかっていたはずの原田が抜刀して岸田森率いる警察隊を待っている。原田の後ろから音もなく修羅雪が悪の天使のように現れる。全員切り倒され、原田も死を覚悟、殺してくれと修羅雪に頼む。剣に生きる殺し屋らしく、修羅雪は刀をスパッと突き刺しあの世に行かせてやる。修羅の雪が舞うラストでありました。グダグダ言いながら書くこと、多かったわね。だからナンセンスって好きよ。

 

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