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特集「ラブコメは天使のため息」

2021年9月5日

特集「ラブコメは天使のため息」⑤
いつか晴れた日に(上)(1996年 社会派映画)

監督 アン・リー

出演 エマ・トンプソン/ケイト・ウィンスレット/ヒュー・グラント/アラン・リックマン

シネマ365日 No.3680

二組の恋の行方

特集「ラブコメは天使のため息」

原作ジェーン・オースティン(原題「分別と多感」)の監督・出演者の顔ぶれを見ただけで胸が弾むし、ちょっと意地悪な映画ファンは(じっくり品定めしてやろう)かも。どっちにしてもただならぬ期待を持たせる陣容なのであります。ドタバタのコメディではありませんが、将棋の名人戦のようなオースティンの詰め方が緊張感を高揚させる、その面白さもありますが、なんといっても、登場人物たちの個性の描き分けが、物語の底流に「人間喜劇」の様相を呈するのです。オースティンの小説は決して人を不幸にしない。トラブルや失意のどん底は味わわせても、それが何なのよ、どんな小さな場所にも田舎にも、不幸に襲われた家庭にも幸せは巡ってくると位置付けています。それがおめでたすぎてアホらしくならないのは、人間のエゴや損得、身分や貧富の差別による蔑み、それとともにヒロインの、自分を見失わない静かな情熱がしっかり描かれているからでしょう▼まして監督はアン・リーです。この人のジャンルの広さには定評があります。スワッピングを取り上げた「アイス・ストーム」、幻想的なアクション「グリーン・デスティニー」、男性同士の恋の哀切な運命「ブロークバック・マウンテン」、種明かしでアッと言わせる「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」。それぞれ異なるジャンルの高品質な作品が並びます。どんなアタマしているのでしょうね。本作は平凡な家庭で起こった恋愛と結婚の報告書です。ラブシーンなし。ベッドシーンなし。駆け落ちも不倫も略奪愛も、殺人も裁判もなし。アン・リーはジェーン・オースティンが「近所に4、5軒も家があれば小説はいくらでも書ける」と言った通り、物々しい大河ドラマではなく、引き込まれずにはおれない、室内楽のような映画に仕上げました。監督っておもしろいです。ヒッチコックのようにサスペンス帝国を築き上げた監督もいれば、新しいジャンルでその都度、映画賞をさらうアン・リーみたいな人もいる。共通するのは品質第一を史上命題とした天才であることでしょうか▼貴族の娘3人と母は一家の主人である父が亡くなり、年500ポンドの年収しか遺されず、屋敷を出て行くところから始まります。父親は死ぬ間際、妻と娘たちの身を案じ、先妻との間の息子ジョン(彼が遺産を引き継ぐ)に、母娘の行く末を頼むと頼んでいたにもかかわらず、ジョンの妻ファニーがケチの性悪女で、たった500ポンドしか残さないでいい、しかも屋敷を立ち去るよう仕向けたのです。陰険な女のイジワルが冴えています。ファニーにはふたりの弟がいて上がエドワード(ヒュー・グラント)、下がロバートと言います。姉妹は上がエリノア(エマ・トンプソン)、下がマリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)。全く性格の違う姉妹で、エリノアは慎み深く理性的。マリアンヌは情熱的で恋に積極的。屋敷を出た一家は縁あって従兄弟が提供してくれたコテージに住むことになります。そこへロンドンから立ち寄ったのがエドワードです。家族は、将来政治家が大物弁護士を嘱望していますが、彼は「できれば聖職者になりたい」という穏やかな青年です。エリノアに惹かれ、エリノアも誠実な彼が好きになる。エリノアは家族の面倒をみているうち、世間がいう「嫁かず後家」になった。弟とエリノアが好意を持ちあっていることを、姉ファニーは見てとりますが「財産もない貧乏人との結婚などめっそうもない」と権高に否定する。並行してマリアンヌの恋愛が進みます。二組の恋の行方が物語の中軸です。

 

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