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特集「ラブコメは天使のため息」

2021年9月6日

特集「ラブコメは天使のため息」⑥
いつか晴れた日に(下)(1996年 社会派映画)

監督 アン・リー

出演 エマ・トンプソン/ケイト・ウィンスレット/ヒュー・グラント/アラン・リックマン

シネマ365日 No.3681

存分に生きた女

特集「ラブコメは天使のため息」

妹マリアンヌの相手はロンドンから来た青年貴族ウィロビー。乗馬が得意だ。野原に出て雨にあい、転んで足をくじいたマリアンヌを家まで運んでくる。洗練した物腰にマリアンヌはいかれる。ウィロビーは彼女を馬車に乗せデートに連れ出し、シェイクスピアの詩を暗唱し、派手な成り行きはたちまち村の噂となる。エリノアはまだよく知らない男性と遊びまわるものではないとハラハラするが「私は姉さんとは違う。心がそのまま態度に出るのよ」と自分を抑えようとしない。ここにもうひとりの男性がいる。コテージを提供してくれた従兄弟ジョンの親友のブランドン大佐(アラン・リックマン)だ。独身の中年貴族である。マリアンヌに惹かれるが、彼女はウィロビーに惚れ込んでおり「俺には興味なさそうだ」と落胆している。彼には過去に辛い恋の経験があった▼エドワードもウィロビーも「実はあなたに大事なお話が」と姉妹に何事かを打ち明ける寸前までいくが、邪魔が入り告白はなされない。慎重なエリノアはともかく、マリアンヌはてっきりプロポーズだと有頂天になった。ところがロンドンの舞踏会で再会したウィロビーは美女と一緒だった。彼はそそくさと「私には愛する人がいます」と白状する。聞けば5万ポンドの持参金付きの美人と結婚するそうだ。マリアンヌは気のすむまで泣くしかない。エリノアにも大波が来た。エドワードには5年前密かに婚約した女性ルーシーがいた。彼女は度々エドワードからエリノアのことを聞かされており、お会いできるのを楽しみにしていたと無邪気に挨拶した。脳天直撃のショックのはずだがエリノアは耐え、エドワードの幸福を祈る。地べたにめり込んだ姉妹だが、ここからが原作者オースティンの本領発揮で、最後にどんでん返しが待っている。ブランドン大佐はウィロビーの過去を知っていた。マリアンヌにふさわしくない相手であるとわかっていたがマリアンヌがベタ惚れだったから男らしく引き下がった。しかしウィロビーが別の女性と結婚した今は違う。病気になって死にかけたマリアンヌに寄り添い我慢強く時期を待つのだ。エドワードとルーシーが結婚した知らせをエリノアは受け取った。洗濯、庭仕事、畑の手入れ、エリノアは黙々と家事をこなす。ある日末の妹マーガレットが田舎道を家に向かって騎馬で急ぐ男性を認めた。誰かしら。「エドワードよ」と叫んだ▼母、エリノア、マリアンヌ、マーガレットが揃う居間にエドワードが入ってくる。「お幸せになられて」声をかけるエリノアにエドワードはもごもごと「ご存知ではなかったのですか? ルーシーが結婚したのは弟のロバートです。舞踏会で意気投合しました。僕は聖職者となり一家の期待に外れ、弟が全財産の相続人となりました。婚約は解消です」。母と妹たちが音もなく席を外しふたりきりにした。「彼女とのことは若い時だった。僕はまだ仕事もなく世間も知らず愚かだった。あなたの気持ちは友情であり、僕の片想いだと思っていた。弁解しに来たのじゃありません」。庭ではマーガレットが木に登って望遠鏡で室内を覗いている。木の下で母とマリアンヌが「どう、どう?」やきもきして成り行きを知りたがる。「エドワードがそばへ寄った、ひざまずいた!」。快哉。マリアンヌは誠実な大佐の愛を受け入れ、めでたく二組の結婚が相成る▼オースティンは41歳の若さで没しました。劇中「女性は仕事も持てず専門の教育も受けられない」とエリノアに言わせています。18世紀の女性たちは女であるがゆえに家督の相続から排除され、結婚は愛の、恋の、ではなく、女が生きるための死活問題でした。そういう環境でエリノアのような、気のすすまない結婚に焦るのでなく、婚活に狂奔するのでなく、世間から独身者への冷たい視線を受けながら我が道を行くのは、オースティンの自画像です。生前発表した小説は全て匿名でした。女性の作品を発行する出版社はなかったからです。しかしながら作品の湛える温かい体温と鋭い人間観察は、女性がそこで生きざるをえなかった社会の偏見の中でも、彼女が力をふるって存分に生きた証を伝えています。

 

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