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特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」

2021年9月9日

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」②
アリス・イン・ワンダーランド時間の旅(上)(2016年 ファンタジー映画)

監督 ジェームズ・ボビン

出演 ミア・ワシコウスカ/ジョニー・デップ/アン・ハサウェイ/ヘレナ・ボナム=カーター

シネマ365日 No.3684

僕を信じてくれ

特集「9月のベストコレクション」

大ヒットした一作目より興収がよくなかったという理由が低評価に結びついたらしいけど、そんなことはないと思う。とってもよかったですよ。本作の主人公はクロノスフィア、万物の大時計の動力源が象徴する「時間」ですが、時間のヴィジュアルを「海」にするなんて素敵だわ。たいてい「空間」ととらえがちだけど。三島由紀夫が「金閣寺」で「金閣は時間の海を航行する船だった」と書いた、あの美意識がよみがえったわ。ヒロイン、アリスは親友タラント(=マッドハッター、ジョニー・デップ)を助けるために、時をさかのぼり過去を書き換える冒険に出ます。登場人物たちはおなじみ白の女王(アン・ハサウェイ)、赤の女王(ヘレナボナム=カーター)、それにウサギやワンちゃん、チェシャ猫らアンダーランドの住人たち。常識の枠外の世界に住む空想の仲間です▼赤の女王は相変わらずイケズで横暴な暴君。タイム(時間を体現する男)を顎でこき使い、クロノスフィアを使って過去に戻り、妹・白の女王に復讐しようと目論んでいる。彼女はデカ頭の容貌にコンプレックスが凝結、自分は誰にも愛されない、愛されたことがないと嘆く「心は孤独な旅人」。タラントは家族のはみ出し者の落ちこぼれ。世を拗ねて反抗的だが、実は帽子職人として父親に認めてほしい「エデンの東」キャラ。成長したアリスは3年の航海から戻ると父親は他界し、生活苦から母親ヘレンは会社を手放そうとしている。譲渡しろと迫るヘイミッシュは「君を事務員に雇うよ。女性が事務員で働ける会社なんてうちだけだよ」と見下すパワハラ男。アリスはアンダーランドに戻り、まずタラントを失意のどん底から救おうとします。女性蔑視あり、独立不覊の挑戦あり、友情あり、家族の絆ありの、ヒューマンかつホームドラマ山盛りの寄せ鍋なのですが、時間に対する製作者の哲学が、映画をお手軽に終わらせていません▼時間を四次元の要素ととらえた作品に「インターステラー」がありました。クリストファー・ノーランの誰も見たことのない(当然ですが)四次元世界を林のような立錐で構成した映像も美しかったが、本作の「海」は、私たちがよく知っている地球上の形象だけに親しみがあり、丸い小さな豆みたいなクロノスフィアを操縦し、アリスが暴風圏を突き進むシーンは手に汗を握ります。彼女はタイムに無断でクロノスフィアを盗む犯罪人であり、そのためアンダーランドを壊滅に引きずり込む悪人でもあるのですが、そこはそれ、やはりヒロインの顔の立つようにできていまして、全滅一歩手前で時間は正常化するのです。ジョニデがなんで瀕死の病人になったかというと、野原でたまたま見つけた青い帽子です。子供の彼が作った帽子だ。彼の家族は怪獣ドラゴンの襲撃を受けみんな死んじゃった、そう思っていたのですが、帽子が残っているということは、家族は過去のどこかで生きているに違いない、でもどうしたらいい。悶々と苦しんでいる時にアリスが戻ってきた。「アリス、君は僕を信じてくれるかい?」なんてすがる。こんなにヘタレの似合う俳優はおりません。結局アリスはほだされ、できるはずのない過去の書き換えに出かけるのですから、「アナと雪の女王」にしろ、本作にしろ「義を見てせざるは勇なきなり」というか、強く見えて「情にもろい」というか…洋の東西を問わず、どこかに「緋牡丹お竜」の遺伝子が混じっているようなのであります。

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