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特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」

2021年9月10日

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」③
アリス・イン・ワンダーランド時間の旅(下)(2016年 ファンタジー映画)

監督 ジェームズ・ボビン

出演 ミア・ワシコウスカ/ジョニー・デップ/アン・ハサウェイ/ヘレナ・ボナム=カーター

シネマ365日 No.3685

かけがえのない「今」

特集「9月のベストコレクション」

アリスは「時」を憎んでいました。父親を奪った泥棒である。しかしタイムは「過去は変えられない。でも学ぶことはできる」と言います。本作では現実と妄想、空想、幻想が時間の中に縦横無碍に織り成され、登場人物たちが心に残るセリフを言います。アリスは無事タラントの家族を救出し再会を果たさせ、地上に戻ろうとします。仲良しのタラントと別れの時です。「アリス、ワンダーランドで楽しく一緒に暮らそうよ」というタラントに「私はもう、あなたと会えないかも」タラント「思い出の庭や夢の中の宮殿、僕らはそこで会おう」「夢は現実じゃないわ」「そんなこと、だれにわかる?」。人は何かを思い描く限り、それはその人にとって現実なのだ、というこの捉え方、とても意味が深いと思うのです。妄想は、夢は、現実じゃない? じゃ現実とはなんだろう。目の前を通り過ぎる知覚だけが現実なのか。違うだろう、私たちに力を与え生きる楽しさを生み出す想念の力こそが現実ではないのか。これを言う時のジョニデの表情は大人のような子供のような、いやらしいような無邪気なような、実に意味深です。いい役者だと思います▼地上に戻ると母親が譲渡書にサインしかけていた。船を渡せば家には元どおり住むことができる。「ママ、サインして」とアリスは勧める。「いいの?」「船の代わりはあるけど、ママは1人だけよ」。ママ、ハッと気がつく。ビリビリビリ、譲渡書を引き裂き、仰天した交渉相手に「娘があなたのプロポーズを断って正解だった。あなたは心の卑しい男よ。船は渡しません」。そして新会社を立ち上げ貿易の航海に母娘共々出航する。このシーンは「船長の乗船。帆をあげろ」という乗組員のセリフが象徴する、女性の独立宣言と自立編ですね。白の女王と赤の女王の確執の原因はタルトを食べたのは妹の白の女王だったのに、母親は姉の赤の女王だと勘違いして叱った。「トム・ソーヤーの冒険」にも「にんじん」にも、叔母や母親の誤解で傷つく主人公がいました。姉は自分が醜かったから可愛がられないのだ、おまけに雪道転倒、打撲してから頭はますます巨大化し、化け物みたいになり、身なりにも注意を払わず、心にだけは復讐の炎を赤々と燃やします。悪役ヘレナ・ボナム=カーターが一手にワルの精彩を放ちます。やっぱりこんな憎まれ役がいなければ映画は面白くない。最後にこのセリフを。アリスが時の化身タイムに「時間は泥棒だと思っていた。愛する者をすべて奪う。でもあなたは奪う前に与えている。毎日が贈り物よ。毎時間、毎分、毎秒が贈り物なの」。死の元に人は平等だ。人生とは時間を航行する船。かけがえのない今を、現在を大切にしよう。

 

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