女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」

2021年9月11日

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」④
ハッピーボイス・キラー(上)(2014年 サイコ映画)

監督 マルジャン・サトラピ

出演 ライアン・レイノルズ/ジェマ・アータートン/アナ・ケンドリック/ジャッキー・ウィーヴァー

シネマ365日 No.3686

喋る犬と猫と生首

特集「9月のベストコレクション」

幼少期のトラウマから連続殺人犯になった青年ジェリー(ライアン・レイノルズ)のお話。陰鬱なテーマをポップで仕上げたマルジャン・サトラビ監督の感性に脱帽。彼女の監督作品「ペルセポリス」は米サイト誌選出「21世紀のアニメ映画ベスト50」の12位。1位は「千と千尋の神隠し」でした。ジェリーは地元のバスタブ会社で地道に働いている。総合失調症を患う彼には自分だけの心の声が聞こえる。その声は家に飼っているペット、犬のポスコと猫のMr.ウィスカース(以下ウィスカース)との会話として交わされる。ポストは善と良識、ウィスカースは悪とその使嗾を代表する。ジェリーが帰宅するとポスコは穏やかに(おかえり、散歩にでも行こう)、ウィスカースは陰気に(先にメシだ。メシ。一日中こき使われて満足なのか)と意地悪く言う▼ジェリーには片思いの意中の人がいる。イギリス人の経理フィオナ(ジェマ・アータートン)だ。会社が年に一度のパーティーを開きジェリーとフィオナも参加する。同じ経理のリサ(アナ・ケンドリック)はジェリーに気があるが、ジェリーはフィオナしか見えない。フィオナを中華料理のデートに誘うが見事にすっぽかされた。帰り道土砂降りになり、車が故障したフィオナを見つけて送ることに。フィオアナはすっぽかしたことを体裁として謝る。森にさし掛かり鹿が飛び出しフロントガラスに首をつっこむ。「もうだめだ、ジェリー、ひと思いに喉を斬ってくれ」と鹿が頼んだ(気がした)ジェリーは首をかき斬る。おびえたフィオナは車を捨てて雨の中を走る。ナイフを持ったまま追いついたジェリーは誤って彼女のお腹を刺す。混乱し「愛しているよ」と言いながら何度も刺して死なせる。家で事件を聞いた犬と猫。ポスコ「警察に行って説明しろ」ウィスカース「英国人女性を滅多刺しにするなんて。過ちですむと思っているのか? お前は一生刑務所でカマ掘られるのだ。殺意があったのだろう。それは本能だ。殺しはオレを生き生きさせる」▼ジェリーは精神科医ウォーレン博士(ジャッキー・ウィーヴァー)のセラピーを受けている。ジェリーは子供の時、母親の自殺を幇助して精神病院に収容されていた。ウォーレンはその時以来の主治医だ。薬を服用しているかと訊かれ「していない」。「それだとまた病院に逆戻りよ」。ジェリーは服用すると約束するが、猫は「友達をなくしたくなきゃ薬は飲むな。それを飲んだら暗く孤独な世界に迷い込むぞ」猫の言う「暗く孤独な世界」とは現実の社会だ。だが薬を拒否すると自分だけの妄想の沃野が広がり、そこでは殺したフィオナの生首が冷蔵庫から甘い声で囁く「ジェリー、やってくれたわね。私は冷蔵庫の中なんてサイテーだわ。友達を連れてきて。リサがいいわ」「リサを殺すのかい」「ピンポン」。猫が言う。「殺せ。生きていることを実感するぞ」。ジェリーはリサに近づく。自分の生まれた家に案内し母親について話す。「母は綺麗だけど悲しい人だった。義父のために故郷(ドイツ)を捨てた。母はよく言った。私だけに動物や天使が話しかけてくる」僕もそうだと答える「わかっているわ。でも人には黙っているのよ。言ったら私みたいになる」病院から収容に来た。「行きたくない」母親はコップを割り破片でお腹を刺し、「母さんを殺して、ジェリー、お願い」そう懇願した…辛そうなジェリーをリサは慰め、一夜を共にする。家に帰るとフィオナの生首が「ジェリー、友達はまだ?」。やがて保安官が森で女性の刺殺死体を発見した。猫が「お前は殺しが好きなのさ」勝ち誇って言った。監督はしゃべる犬と猫と生首を使ってコメディタッチにしながら、その実、ジェリーの悲劇をとめどない深みに引きずり込んでいきます。

 

あなたにオススメ