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特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」

2021年9月20日

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」⑬
ザ・オペラティブ(2020年 社会派映画)

監督 ユヴァル・アドラー

出演 ダイアン・クルーガー/マーティン・フリーマン

シネマ365日 No.3695

“颯爽”と縁のないヒロイン

特集「ペガサスを見上げる海は9月のベストコレクション」

女は二度決断する」に続くダイアン・クルーガーの重い映画。「007」や「M:I」シリーズと全然違うリアリズムが新鮮です。「ザ・オペラティブ」とはズバリ工作員。モサド(イスラエル諜報機関)のハンドル(諜報員管理者)トマス(マーティン・フリーマン)にリクルートされたレイチェル(ダイアン・クルーガー)は、イランの核対策作戦に充てられる。ライプツィヒ勤務の一般事務職だった彼女は、ビザ更新のタイミングでモサドに目をつけられた。根無し草の異邦人だった彼女に「居場所と使命」が与えられると勧誘員は言ったらしい。レイチェルはイスラエルの敵国イランの首都テヘランに英語教師として単身潜入した。敵国の文化を尊重し習慣を守り、目立たなく受け入れられる人間として生活する。市場の八百屋のおじさんと話し、同じアパートの同居人親娘と親しくなり、居心地のいいアパートに満足し、テヘランに馴染む。相手が疎遠だと警戒しても顔見知りになれば話しやすく、情報は取りやすくなる。生活者の心理を踏まえた地道な活動が続く▼彼女の最重要任務は、政府と取引のある電気機器会社の社長ファルハドに接近し、彼の会社を利用してイランの核開発を妨害する欠陥商品を売りつけること。しかしファルハドと恋仲になった彼女は妊娠、ケルンで中絶するが組織からは疑惑の目で見られた。レイチェルもまた、罪もない市民を平気で巻き添えにする組織の活動を疑問視した。ファルハドを拉致してまでイランに不良部品を売りつけようとする組織を見限り、レイチェルは「父が死んだ」とトマスに電話する。「撤退する」のコードだ。彼女はモハドの諜報活動の情報を貸金庫に預け、保管料を前払い、次の支払いに行かないと内容を公表される。組織を抜けファルハドを解放したら金庫の情報を教えると、レイチェルはトマスに条件提示した。組織は彼らが話し合っているカフェに「始末人」を差し向けた。どこからか銃口が狙っているはず。トマスは歩きながらレイチェルの前後左右を移動し狙撃をかわそうとするが、彼自身が撃たれる。レイチェルの背後に狙撃者が。しかし彼女を殺したら金庫の情報は公表される。どうする。ここでラスト▼派手なスパイ映画を期待したら物足りませんが、スパイの「日常勤務」としてみたら緻密です。スパイというのは感情に左右されないサイボーグみたいな人間かと思っていたらこれがまあ、もろ感情レベルで判断するフツーの人間ばかりです。証拠もないのに「あいつは最初から怪しいと思っていた」とか、後ろ盾のない人間(例えばレイチェル)に過酷な任務を与え使い捨てにするとか、大義名分を振りかざすが、それを実現する自分の考えは何もないとか。「007」でジュディ・デンチが演じたMみたいなリーダーは1人もいない。レイチェルにしてもあっさり組織を足抜けできるとは思っていなかったでしょうが、もう少し組織内でトマス以外の味方を作っておく「プランB」がなかったことも不手際だ。ダイアン・クルーガーの笑顔のないレイチェルが辛そうだ。これじゃ“頼りになる男”ファルハドと寝るに至るのも仕方ないかと思うが、それを言っちゃおしまいなのね。言い換えれば鉄板女スパイではなく、緊張とストレスで弱みを見せる、颯爽と縁のないヒロインが、従来のスパイアクションと一線を画しました。

 

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