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特集「別室でミステリーを」

2021年9月21日

特集「別室でミステリーを4」①
ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜(2017年 ミステリー映画)

監督 滝田洋二郎

出演 西島秀俊/宮崎あおい/綾野剛/二ノ宮和也/竹野内豊

シネマ365日 No.3696

本物の料理人

ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜 (2017年ミステリー映画)

一度食べた料理の味を絶対に忘れず完璧に再現できる絶対味覚=麒麟の舌=を持つ人がいるそう。主人公、佐々木充(二宮和也)は天才料理人と言われながら心が冷たい。親を早くに失くし施設で育ち、長じてレストランのオーナーとなったが、傲慢かつ独りよがりの“嫌われキャラ”で誰もついていかず借金まみれで倒産。死ぬまでに一度食べたい料理をその人のためにだけ作る「最後の料理人」となって高額の謝礼を受け取り、独力で借金を返そうとしている。施設で兄弟のように育った健(綾野剛)だけが、充の人格欠損を憂慮するが耳を貸さない。そこへ中国料理の伝説の料理人・楊晴明の依頼がくる。かつて満州国で日本人料理人・山形直太朗(西島秀俊)が考案した「大日本帝国食彩全席」の再現だ。麒麟の舌の持ち主だった山形はレシピを完成させるが第二次世界大戦開戦直前に消息を絶ちレシピは行方不明になった。レシピはどこにある。充は楊が「この人なら何か知っているかも」と教える人物を訪ね歩き、行方を追う▼1930年代。山形は陸軍の三宅大佐(竹野内豊)から中国料理の真髄「満願全席」を超える料理のレシピを作り出す命を受け、妻千鶴(宮崎あおい)とともに満州に渡る。日本軍の厨房の奥で中国人の楊と日本人鎌田が助手につき、昼夜を分かたぬ試行錯誤が繰り返される。やがてレシピのお披露目である天皇の行幸の日が近づいた時、三宅は山形に料理に毒を盛れと命じる。目的は天皇暗殺ではなく、中国人が毒殺を図った既成事実をこしらえ、満州国独立を阻止する政治的陰謀だった。犯人に用意されていたのは助手の楊だった。山形は芝居を打って楊を逃し、レシピを燃やし、射殺された。しかしレシピはもう一部あった。妻の千鶴が山形の下書きを保存し、清書して写真を添え一冊に綴じていた。充の仕事はそのレシピの発見である▼この辺りまでは緊密な構成で進むのですが山形が退場してからラストまで、特に種明かしに至って失速し、箇条書きみたいに雑になった。込み入ったお話が連なるのだけど、ネタバレすれば充は山形の孫であり、麒麟の舌は継承したが料理の心は受け継いでいない。このままではクズ同然だ。レシピは施設の園長が亡き充の母から預かっていたのである。そこで今は伝説の料理人となった楊、田舎の庵で料理を作る鎌田、山形の部下だった鈴木、彼が育てた山形の忘れ形見にして充の母、ありとあらゆる関係者をたどり元祖“麒麟の舌”直太朗の信念を貫いた生き方と料理への愛を伝えるため充に祖父の足跡をたどらせた、とまあそういうわけ。大戦を挟んだ激動の昭和という時代が刺激的で、飽きさせない舞台設定となっているが、正直言うと(幸せなボクちゃんね。世話の焼けること。遅ればせながら本物の料理人になってください)だった。ここまで面倒見てくれる人がいるなんて、結局山形と妻の料理へ注ぐスピリッツと情熱が半端じゃなかったからよ。料理は人を幸せにするためにある、人を笑顔にするためにある、その心が立派な料理人の資格だと、妻は周囲を顧みず独走する夫に噛んで含めるように諭した。彼女がお産で命を落とした夜、厨房にこもった直太朗は、結婚を申し込んだ日に作ったレシピを再現する。それを美味しそうに食べる幸せな、宮崎あおいの笑顔の回想がよかった。

 

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