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特集「秀麗の10月ベストコレクション」

2021年10月8日

特集「秀麗の10月ベストコレクション」⑧
ジェイン・オースティンの読書会(下)(2008年 社会派映画)

監督 ロビン・スウィコード

出演 本文中に表記

シネマ365日 No.3713

恋愛の着地点

特集「秀麗の10月ベストコレクション」

一番の役得はエミリー・ブラントだろう。夫のフランス出張に同行するのを楽しみにしていた。パリのガイド本を何冊も買い込み、フランス語をブラッシュアップする。夫とは間はすっかり冷めているが、それでも現状改善のきっかけになればと密かに願っている。彼女の父親は不明。母がコミュニティで産み落とした。今でもヒッピーが嫌いである。自己抑制が強く、小さな間違いを許せず読書会でも鋭く指摘する。敬遠したい女性ではあるが、どうかした拍子にくよくよ自己批判するところが可愛くもある。結局イケメン生徒とのラブホ行きはUターン。夫の元に帰るが、夫は夫で妻の気持ちが離れていることに気づいている。しかし「俺をどうにかしようと思うな。俺は俺だ」と開き直る。こんな男でも捨てられない女とは、なんと哀しいものだろう。いや、そうではあるまい、夫婦にしかわからない愛の機微があるのだ…そんな隙間愛をエミリー・ブラントがカマトト半分、健気半分の微妙なキャラで演じる▼シルヴィアの夫は「好きな人ができてもう別れられないので、今までの生活をリセットしよう」とズバリ直球の離婚宣言だった。シルヴィアは落ち込んだものの弁護士を通じ、住居財産を確保し、そんならもう亭主はいらない、とばかり元気を盛り返す。ジョスリンが紹介してくれたグレッグは好青年であるが、彼が好きなのはジョスリンだと見て取れる。他の女に夢中の男にかまっている暇はない。しかしあの青臭い若い男(グレッグ)に比べたら、サイテーだけど元亭主はそれなりに男くさかった、なんて思い始める。この映画はオースティンの小説と同じ、劇的な大恋愛ではなく、日々の移ろいの中で気付いたり、思い直したり、立ち直ったりしながら日常を取り戻していく4組の恋愛劇です。ジョスリンとクレッグ、元の鞘に納まるプルーディとシルヴィア。あと一組はビアン・カップルのアレグラと恋人▼物足りなかったのは、読書会唯一の男性参加者クレッグが、「あなたお金持ちなの?」とジョスリンに聞かれ「まあね」と答えを濁している。すわ、大富豪の御曹司かと思わせておいて、お金のことはそれきり触れられません。オースティンの小説は結婚相手の財産について鵜の目鷹の目で俎上に上るのが常です。その時代の女たちは女が生きていく資力に、具体的に言えば結婚する相手の資力に敏感だった。敏感どころかそれが次の人生を左右する決定的な条件だった。結婚とは金なり。オースティンの小説の根底には生き生きとお金が息づいています。それを思えば本作の女たちが「愛とは元の鞘に納まること」という結論に達したのは、えげつないお金の話はビタ一文話題にあげず、しとやかにしてしたたかに最優先順位を決めたところに、オースティン読書会の成果はあったのかもしれません。それにしても、生活力がありながら趣味も話も合わない旦那とヨリを戻したプルーディの選択は、何を血迷って…と思うしかありませんでした。そんなヒロイン、オースティンにはいなかったよね? この辺りがちょっと、監督の詰めが甘かった気がする。

 

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一番の役得はエミリー・ブラントだろう。夫のフランス出張に同行するのを楽しみにしていた。パリのガイド本を何冊も買い込み、フランス語をブラッシュアップする。夫とは間はすっかり冷めているが、それでも現状改善のきっかけになればと密かに願っている。彼女の父親は不明。母がコミュニティで産み落とした。今でもヒッピーが嫌いである。自己抑制が強く、小さな間違いを許せず読書会でも鋭く指摘する。敬遠したい女性ではあるが、どうかした拍子にくよくよ自己批判するところが可愛くもある。結局イケメン生徒とのラブホ行きはUターン。夫の元に帰るが、夫は夫で妻の気持ちが離れていることに気づいている。しかし「俺をどうにかしようと思うな。俺は俺だ」と開き直る。こんな男でも捨てられない女とは、なんと哀しいものだろう。いや、そうではあるまい、夫婦にしかわからない愛の機微があるのだ…そんな隙間愛をエミリー・ブラントがカマトト半分、健気半分の微妙なキャラで演じる▼シルヴィアの夫は「好きな人ができてもう別れられないので、今までの生活をリセットしよう」とズバリ直球の離婚宣言だった。シルヴィアは落ち込んだものの弁護士を通じ、住居財産を確保し、そんならもう亭主はいらない、とばかり元気を盛り返す。ジョスリンが紹介してくれたグレッグは好青年であるが、彼が好きなのはジョスリンだと見て取れる。他の女に夢中の男にかまっている暇はない。しかしあの青臭い若い男(グレッグ)に比べたら、サイテーだけど元亭主はそれなりに男くさかった、なんて思い始める。この映画はオースティンの小説と同じ、劇的な大恋愛ではなく、日々の移ろいの中で気付いたり、思い直したり、立ち直ったりしながら日常を取り戻していく4組の恋愛劇です。ジョスリンとクレッグ、元の鞘に納まるプルーディとシルヴィア。あと一組はビアン・カップルのアレグラと恋人▼物足りなかったのは、読書会唯一の男性参加者クレッグが、「あなたお金持ちなの?」とジョスリンに聞かれ「まあね」と答えを濁している。すわ、大富豪の御曹司かと思わせておいて、お金のことはそれきり触れられません。オースティンの小説は結婚相手の財産について鵜の目鷹の目で俎上に上るのが常です。その時代の女たちは女が生きていく資力に、具体的に言えば結婚する相手の資力に敏感だった。敏感どころかそれが次の人生を左右する決定的な条件だった。結婚とは金なり。オースティンの小説の根底には生き生きとお金が息づいています。それを思えば本作の女たちが「愛とは元の鞘に納まること」という結論に達したのは、えげつないお金の話はビタ一文話題にあげず、しとやかにしてしたたかに最優先順位を決めたところに、オースティン読書会の成果はあったのかもしれません。それにしても、生活力がありながら趣味も話も合わない旦那とヨリを戻したプルーディの選択は、何を血迷って…と思うしかありませんでした。そんなヒロイン、オースティンにはいなかったよね? この辺りがちょっと、監督の詰めが甘かった気がする。

 

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