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特集「秀麗の10月ベストコレクション」

2021年10月10日

特集「秀麗の10月ベストコレクション」⑩
ブラック・ウィドウ(下)(2021年 アクション映画)

監督 ケイト・ショートランド

出演 スカーレット・ヨハンソン/フローレンス・ピュー/レイチェル・ワイズ

シネマ365日 No.3715

ナターシャという女

特集「秀麗の10月ベストコレクション」

ナターシャ・ロマノフはなぜ単独ヒロインとなりえたか。魅力的だからよ。彼女のキャラには少女コミック、少女アニメのヒロインの伝統が脈打っている。戦う女である。孤児である、もしくは群れない孤高の存在である。危機に動じず仲間を救う沈着果敢な判断力。爾来少女たちが憧れたのは「美少女戦士セーラームーン」であり「もののけ姫」であり「ナウシカ」であり、さらに遡れば「リボンの騎士」だった。本来男性に求められてきた能力を発揮する、ジェンダー規範から逸脱する美しい女性だった。世間が「よし」とする女性規範から逸脱し、規格外にいる女性たちだったと言える。もっと強引に言うなら社会からスポイルされず、自分の望む自由を貫いてきた女たちだ▼少女小説の双璧である「若草物語」と「赤毛のアン」は対極関係にある。幸福を夢見るアンはつつがなく結婚し、家庭を持ち、母となり女性が普通望む幸福な人生を得るが、作者のモンゴメリーは一生を家族に縛られ最期は自殺だ。そんな彼女が「アン」を書き続けたのは、書くことが、本の中で幸せを紡ぐことが唯一の避難場所だったからだ。「若草物語」は何度映画化されただろう。そこにはナターシャ・ロマノフの片鱗が見える。主人公ジョーは作家志望の次女。姉妹4人の家族を愛し、姉が結婚することに猛烈な抵抗を示す。作家として経済的に独立したいものの、そこまでの実力はない。隣家の青年とは友情はあるが恋愛はない。このヒロインは恋愛オンチなのだ。当時の社会からすれば異端児である。この彼女が原作者オルコットのお気に入りだった。モンゴメリーもオルコットも主人公に自分の一部を、あるいは全部を投影したことに変わりはないが、女性が選ぶされる2つの選択肢、結婚と非結婚が明瞭に描かれているのが現代から見ると興味深い▼ナターシャはさらに飛躍する。このどちらとも無縁である。彼女にあるのは自由への欲望で、選び取ることによって解放を手に入れたい。あれだ、これだと指図されるのは相手が組織だろうと男であろうとイヤ。本作のナターシャには「若草」のジョーのように、注意深く恋愛関係が排除されている。これは女性監督ケイト・ショートランドが従来のジャンルに属させたくないヒロインを作りたかった、独特の目線だと思う。性差別から女を解放させる1つの手段として、男と女をイーブンな立場にするには恋愛を人まず横へ退けておく設定が多い。ナターシャのキャラ造形にいくつか気のつくことを挙げたが、最も強力な要素はスカーレット・ヨハンソンに行き着く。なんじゃ、結局は女優かい、と笑われるだろうが、この女優とこの役という、猫とカツオブシふうコンビネーションなしに映画の面白さはない。特にヨハンソンのファンではないが、やはり突出していると思う。

 

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