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特集「ベリッシマ(美少女)」

2021年10月13日

特集「ベリッシマ(美少女)2」③スカーレット・ヨハンソン2
ママの遺したラヴソング(下)(2007年 家族映画)

監督 シェイニー・ゲイベル

出演 ジョン・トラボルタ/スカーレット・ヨハンソン/ガブリエル・マクト

シネマ365日 No.3718

ジオラマ

パーシーの元カレがニューオリンズに追いかけてきた。パーシーが飛び出した後、母親の遺言執行人である弁護士の手紙を開封し、ボビーとローロンがあの家に住める権利は1年であるから、この7月には彼らは出て行かねばならない、だから一緒に住もうと、人の褌で相撲を取る男にパーシーは言う。「彼らは私を高校に復学させ、試験勉強も見てくれる。大学に行くのよ」。その通りなのだ。教育は必要だとボビーがツテをたどり高校の修了証書を取り、ローソンが試験の課題を一緒に考えてくれる。こういうところが、ジャケ写によればパーシーの成長物語ということになるのでしょう。本作は製作のスタートから実際の撮影にこぎつけるまで5年もかかり、当初15歳の少女だったヨハンソンは20歳になり、少女と称するのはやや難しいのですが、幸い幼な顔が残っていて違和感はありません▼パーシーの卒業式。ボビーとローソンはネクタイを締めスーツに着替えて保護者として参列する。ボビーの腎臓疾患が悪化していた。長くないことをみなわかっている。でも彼は酒もタバコもやめない。養生する様子も見えない。血尿が止まらない。ボビーはパーシーとダンスを踊る。晴れて父と娘とわかったのだ。「なぜママが私を同居させたかわかったわ。ママを愛していた?」「心からね。でもまさかね…。パーシー、君はもう独りじゃない。君には俺がいるよ」。でもその時間は短いのだ。2年後、パーシーはニューオリンズ大学に進学し、父の墓に詣でた。ローソンとは恋人同士になるみたいだ。ローソンを愛するジョージアがまたいい女性で、快くパーシーの幸せを祈る。ことほどさように本作には悪人がいないのだ。皆がかつて住人のマドンナだったロレーンの遺児を愛し、見守り、巣立ちを祝福する。胸のつかえない、ヒューマンドラマの決定版です▼スカーレット・ヨハンソンはいろんなジャンルに出演していますが、本作は「意外な代表作」ではないでしょうか。人は生きて行く過程で何らかの喪失に巡り合う。本作では母親の死、父親との邂逅と別れ、恋人とも出会ったみたいだが、どうなるか。舞台となったニューオリンズが大事な役割を受け持っています。ニューオリンズといってすぐ思い浮かぶのは「欲望という名の電車」ですが、ヴィヴィアン・リーが「この街の午後は長い雨が降るのね」と気だるげにいうシーンに、ニューオリンズの暗い叙情がよく出ていました。本作にもまず冒頭、ボビーが歩く街路の古びた壁の寂しそうな風景がかなり長く続きます。シェイニー・ゲイベル監督によれば、ボビーはニューオリンズの退廃的な美しさを象徴する人物です。路面電車の走るレトロな街。穏やかな午後。彼女はオールロケでニューオリンズを劇中に活写しました。そこには未来のアイコンとしてパーシーがおり、過去と亡失のそれとしてボビーが位置します。監督は悪人も殺人も不倫も書かず(脚本も彼女です)真意を具体化させるものとしてニューオリンズを登場させた、そのジオラマの力が本作の真の主役だというのは言い過ぎでしょうか。

 

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