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特集「怖いものみたさ」

2021年10月21日

特集「怖いもの見たさ3」③
ラバーボーイ(2019年 ホラー映画)

監督 トレバー・マシューズ/ジョン・ノーツ

シネマ365日 No.3726

ラバーボーイの存在感

特集「怖いもの見たさ3」

ホラーにはおなじみのマスク殺人鬼のお話。イケズな少女が太った気の弱い少年をラバーボーイ(イケメン)とからかい、ズボンを降ろせとか、パンツも脱げと強要し「なんて小さいの。ドングリみたい」と嘲笑する。少年は転ぶように逃げながら怒りがたぎる。帰り道自転車に乗ったイケズ少女を見かけ、自転車を転倒させ大怪我を負わせた挙句、高い橋から自転車ごと突き落とす。10数年後。女子大生カイリー(アリ・コブリン)は父親が死に、母親への仕送りと学費捻出のためポルノサイト出演に申し込む。サイト運営は「ガールハウス」(原題)と呼ばれる屋敷で行われ4、5人の女性が個室で生活し「裸になる時間」が来るとパソコンの前で顧客とチャットしながら希望に沿って脱いだり踊ったりする。常連の1人がラバーボーイだった。カイリーは不穏な感じを持つラバーボーイにやさしく接する。「でも君は俺の容姿素顔を知らないだろ」。パソコン接続技術を専門とするラバーボーイはハッキングして自身の画像を送信する。思わずカイリーは引くが気を悪くしないよう取り繕い、「じゃあね」と言ってチャットをシャットダウン。画面をそのままにして部屋を出る▼リズという、ヤク中のため「ガールハウス」をクビになった女性が経営者に泣きついて再雇用。元の自分の部屋を使っているカイリーが気にくわず、留守中部屋に入って画像を見る。常連客のラバーボーイだ。この顔がイケメンとは。女性たちは大笑いし、壁に画像を貼り付けた。ラバーボーイは館内カメラに侵入し、自分の写真が見世物になっていると知り激昂。ガールハウスの場所を突き止め、マスクをかぶって女性たちを惨殺する。指を切り落とす。サウナを高温にして火傷させ、かろうじて脱出してプールに飛び込んだ女性をナイフでグサッ。別の女性は2階から突き落とす。ボーイフレンドとデート中のカイリーは惨劇中、ガールハウスにいなかったが、他の女性はみな殺害された。ラバーボーイの現れ方が不気味だ。忍者みたいに気配を消し、黒い空気のように部屋の隅に立つ、太った体で思いもよらぬスピード移動する、怪力である、しかもパソコン操作の能力は並外れ、天才ハッカー、リスベット(「ドラゴン・タトゥーの女」)並みだ。ラバーボーイは生き残ったカイリーに殺される。元はと言えばサイトの規約に違反した彼の掟破りが悪いのである▼しかしながらB級どっぷりの本作が引っ張るものを持っているのは、ラバーボーイのサイコぶりがきちんと描かれているからだ。少年時の侮辱がトラウマになり、女性へのコンプレックスと嫌悪をかきたてた。それをガールハウスの女性たちとのビジュアルとチャットで紛らわせていたが、カイリーが自分の顔を見て素敵だと言ってくれたことにのめり込んだが、結局は自分を笑い者にした、と思い(画像を貼りだしたのはリズ)プッツンとなり殺害に至る。むちゃくちゃな成り立ちなのだが、言語道断の事件はしょっちゅう私たちの身近で発生している。電車で見かけた女性の幸せそうな様子が気に入らなかったとか、自分と付き合うはずなのに他の男がいたとか、硫酸をぶっかけたとか、降りかかったとしか言いようのない不幸にいつ見舞われるかわからない社会で、ラバーボーイは奇妙で恐ろしい存在感と説得力を発揮している。

 

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