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特集「フレンチ・ノワール」

2021年10月26日

特集「フレンチ・ノワール2」②
黄色の部屋(1930年 劇場未公開)

監督 マルセル・レルビエ
出演 ユゲット・デュフロ/ローラン・トゥタン

シネマ365日 No.3731

古典中の古典

特集「フレンチ・ノワール2」

ガストン・ルルーの「黄色い部屋の秘密」が原作です。密室ミステリーの最高と評価が高い。心理の隙をついたトリックを、種明かしされてみれば「な〜んだ」なのですが、鍵のかかった密室から犯人が消えた、そんなはずがない、窓は内側から施錠され唯一のドアは鍵がかかり、男2人が斧で叩き破った、部屋の中には重傷を負ったヒロインが倒れていただけ…と巧みに「密室」を強調していく▼結婚2日前の夜、父スタルゲルソン教授のパーティーの席で娘マチルド(ユゲット・デュフロ)は脅迫状を受け取った。文面は「司祭館の魅力は昔のまま、庭の輝きも変わらない」。送り主不明のブーケが届くとか、不安に陥るマチルドを婚約者のロベールが「君を守るためならどんなことでもする」と力づける。新聞記者のルルタビーユはなぜか「令嬢は結婚しません」と自信たっぷりに断言する。最初から彼が(俺は何でも知っているのだ)という顔でシャシャリ出るのがやや興醒めです。そのため事件解明に乗り出す名刑事ラルサンとの推理合戦が弱くなりました。刑事や新聞記者がワインに入った睡眠薬で眠らされたり、森番が殺されたり、お話に起伏はあるものの最後まで姿を現さない犯人は誰か、そこでロベールが不意に「私だ」と自白し、あっけなく逮捕に至った。頭に傷を負った令嬢は刑事の聴取に答えられませんでしたが、回復してロベールは無実だと主張する。裁判が始まる。犯人を見たのは令嬢だけだ。それは誰だ、刑事の追及に苦しむ令嬢。そこに新聞記者がアメリカから証拠をつかんで帰国し一部始終をネタバレする▼令嬢はアメリカにいた時、父に隠れて結婚していた。ところが夫の正体が国際的な犯罪人バルメイエールだとわかり別れてフランスに帰国し父教授の研究助手として実験に従事していた。縁談は降るほどあったがみな断っていたのは、彼女が既婚者だったからだ。やがてロベールという伴侶を得たと思った途端、元夫から脅迫状が来た。屋敷内で犯人の姿がいつも忽然と消えたのは、バルメイエールは死んだラルサン刑事になりすましていたから。密室で犯人が消えたのは、彼はマチルドが気絶してから犯人はドアから出て行き、そのあと気がついたマチルドはまだ犯人が部屋の中にいると思って夢中で発砲し、また気絶してしまい、倒れる弾みに鍵が降りたというあまり冴えない密室のトリックなのだ。検察側の証人として出席していた刑事ラルサンは正体を暴かれ毒を飲んで死ぬ。なんだかシェイクスピア劇みたいな最期です。密室系映画には面白い作品が多いです。「パニック・ルーム」「SAW」「フライト・プラン」「10クローバーフィールド・レーン」など、いずれも密度の高い緊張感で引き締まっていました。昨今のそういう映画を見慣れてから本作を見ると、遺伝子の組み替えもDNAの判定も、CIAも天才ハッカーも登場せず複雑な背景もなく、登場人物はごくわずかというシンプルな筋書きは、古典中の古典といった趣があります。ガストン・ルルーは本作の他に「オペラ座の怪人」があり、当時のフランス推理小説創成期を「怪盗ルパン」のモーリス・ルブランと二分する人気作家でした。

 

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