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特集「フレンチ・ノワール」

2021年10月30日

特集「フレンチ・ノワール2」⑥
面の皮をはげ(1963年 犯罪映画)

監督 レイモン・ラミ
出演 ジャン・ギャバン/ジゼール・プレヴィル

シネマ365日 No.3735

次の列車は来なかった

特集「フレンチ・ノワール2」

本作が低評価だったのは品の悪い邦題のせいだと思うわ。原題「ミラー」(主人公の通称)の方がよっぽどよかった。ミラーを演じるジャン・ギャバンには「ゴッドファーザー」に通じる男の典型があると思える。リュサック(ジャン・ギャバン)は元地下運動の闘士。今は大手船舶会社「地中海汽船」の重役になっている。ビジネスの敏腕を社長に認められながら後継者の地位につかないのは、表立って世間に出たくないからだ。一方で彼はかつて作り上げた組織を今でも動かしパリ、マルセイユ、ニースにカジノを経営、政治家と官僚には独自のコネ、そして警察さえ操る裏の顔がある。彼の元には様々な相談が持ち込まれる。解決のためには大臣をクラブに招待し説得する。修道院を改築したい尼僧には業者がふっかけてきた見積もりを却下、交渉を代わってやる。軍の将軍、官房長官に困り事があると「お任せを」すぐに引き受け処理する。カジノを見回り返済不能の客がいると「ツケは断れ」とフロントに指示する▼厩舎を建て馬主となる。ボクシングでは有望な新人ジョーをフランスのチャンピオンにするつもりでトレーニングを視察する。「ジョーは女と会う時間が多すぎます」とトレーナーから聞くと「なんとかしよう」。金に困っている女に6万フランを与え「パリを離れ田舎で暮らせ」と追い払いトレーニングに専念させる。そんな時マルセイユの組織が造反した。「リュサックは独断専行すぎる、俺たちは民主主義が好きだ」が彼らの弁だ。リュサックの元カノ、クレオは不吉な予感がした。彼女は今でもリュサックを「ミラー」と呼ぶ。「気をつけることよ。リュフォーが脱獄したわ」。リュフォーはかつての地下運動の相棒だ。逮捕され長期の刑で刑務所にいたが20年ぶりで脱獄したらしい。リュサックは彼の息子を引き取り自分の子として育て弁護士にした。「あんたを探し息子に会おうとしている」とクレオ▼地中海汽船の大型貨物船「ヨアキム・パシャ号」が処女航海で火災を起こした。造反した組織の仕業だとリュサックは睨む。リュサックは敵対するフォルシュと話し合いの場を持つ。場所はボクシングのトレーニング場。ミドル級フランス・チャンピオンの決定戦はフォルシュが擁するキッドと、リュサック側のジョーの対戦だ。「明日のボクシングで負けた方が引き下がる」協定がなされた。試合は3ラウンド、ノックアウトでジョーの勝利。ヨアキム・パシャ号の火災はその直後だ。フォルシュは手を組むつもりなどない。新聞は「原因は数ヶ月前から続いているギャングの抗争とみられ、高名な実業家L氏が関わっている可能性があり捜査の手が入りそうです」。前歴が晒され、客足が遠のいたカジノは閑古鳥が鳴き、政治家や官僚は会おうともせず、従業員たちは辞めていった。「娘の夫に裏の顔があるなんて」。義母はリュサックの妻を田舎に帰すと言い、妻はリュサックを拒絶。弁護士に育て家を買い与え事務所を作ってやった息子さえ「父さんは何者? 僕の仕事にも悪影響が出る」。リュサックは「お前は実の息子ではない、明日にでも好きな名前に変えろ」と言うと喜んで別れを告げた▼リシャールが接触してきた。「息子に会いたい。俺が父親だと知った時の顔が見たい」「結婚して幸せにしている。諦めろ」いうなりポケットに手を入れたまま銃弾を放つ。クレオに会いに行く。「パリを離れた方がいいわ」「こうしていると昔みたいだな。明日はリュフォーの葬式だ。みな集まるだろう。片付けることがある」。墓地に来た。リュサックを認めたフォルシュが攻撃した。リュサックリ側も応戦銃撃戦となる。部下たちは倒れリシャールは軽機関銃でフォルシュを倒した。「ミラー」と呼ばれ振り向くと顔見知りの刑事だ。甥の就活を世話してやった彼は、銃を構える暇も与えずリュサックを射殺した。ゴミみたいに殺される最期。頂点から奈落へ移る権力者の陰影を、ジャン・ギャバンがきめ細かく刻み込む。自分を捨てる者を追わず、過去に未練を持たず、けじめだけはきっちりつける男。クレオは愛を乞わない女だ。「何かトラブルがあるから私のところに来たのでしょ。人生は地下鉄と違う。乗り損じたら次の列車は来ない」「すべてを捨てて君と人生を取り戻せるとでも?」「私はいつも隣にいるわ」だからどうするかは男が決めたらいい。そういう女だ。次の列車はやはり来なかったけれど。

 

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