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特集「初霜は11月のベストコレクション」

2021年11月2日

特集「初霜は11月のベストコレクション」②
約束の宇宙(そら)(下)(2021年 家族映画)

監督 アリス・ウィンクール

出演 エヴァ・グリーン/マット・ディロン/ザンドラ・フュラー

シネマ365日 No.3738

魂の存在

宇宙飛行士の訓練が具体的だった。サラは「毎日15キロ走る。視力は100点満点。心拍数安静時で1分間53。運動時も160を超えない。映像の視聴は逆さまにして宇宙船内の逆状態になれる。全てに注意を払っている。周りの人の匂い、食べ物の味、これが最後と思って。宇宙での私は体重も発汗もなく、涙も流れない。身長が5〜10センチ伸びる。細胞は半年で40年歳をとる。エアロックの訓練。宇宙塵によって肺の炎症の程度を測定する。この実験は低酸素状態で行われる。生理はとめない。制約があるけれどなんとかする」。家族の心配事を抱えている乗組員はサラだけではない。ロシア人アントンは「母が心配だ。戻るまで生きていてくれればいいが」。発射まであと12日。「地球で過ごす最後の日々。アントンの勧めで森や前の音を録音した。宇宙には季節がない。頬を過ぎる風もない。太陽の光もない。宇宙船は高速で回転し、日に16回日没が来る」「宇宙に持っていける私物は靴箱1つ分。重さは1.5キロ以内。地球での全てが1つの箱の中に収まる」母は娘に問いかける「あなたなら何を入れる、ステラ?」▼原題の「PROXIMA」はミッションの名前でもありますが、同時に太陽に一番近い惑星の名前です。宇宙探索プロジェクトは月の時代から火星に移り、サラは「私たちは火星世代」と言っています。エンドロールに10人の女性宇宙飛行士が紹介されます。5度のミッションをこなした女性もいる。日本からは山崎直子さんがいました。みな家族がいて子供がいて、離れ離れの生活を余儀なくされた人たちです。でも同時に、宇宙飛行士とは特別なものではなく、次第に門戸が開かれていることを実感させました。加圧に耐える、肋骨が折れそうなきつい訓練。酸素残量と秒の戦いである宇宙空間の救出作業。ロケットに搭乗することは爆弾に乗るのと同じ。誰にでもできる訓練ではありません。宇宙飛行士だけが入れるロシアの「スターシティ」の建物は1階がロシア、2階がアメリカ、3階がヨーロッパと日本と別れていました。女性がここへ来るのは珍しい。「誇っていい」と案内係の女性がサラに言い、エピソードをひとつ教える。「テレシコワもここに来た。彼女は打ち上げ前に何をしたと思う? アイメイクよ。星のために綺麗でいたいからと」▼地球との音信なしに暮らす実験的な1年間という設定です。春も夏も秋も冬もなく、太陽も光も熱もなく、身長が10センチ近く伸びるなんて。その身長が元に戻るのかどうかは劇中触れられていませんでしたが、特異隔離空間であることは間違いない。でもなんとなく
(サラの個人的な行動は別にして)宇宙飛行士に憧れた、娘のいる女性の実態(に近い)映画ができてよかったと思いました。宇宙にある無限の謎と力は私たちに質問を投げかけることをやめない。ロマンでも科学でも詩でもなく、人間が未だ知りえない「魂」の存在を教え、謙虚にさせてくれる▼ダーク・ファンタジーが多かったエヴァ・グリーンが奇怪でも偏執的でもない女性の役を演じ、セザール賞主演女優賞ノミネートとなりました。ウェンディ役がザンドラ・フュラー。ドイツ語読みでザンドラ・ヒューラー。「ありがとう、トニ・エルドラン」でヨーロッパ映画賞女優賞受賞。特異ないい女優ですよ。私、仏頂面で勝負できる女優3人に、カトリーヌ・ドヌーブ、アデル・エネル、それにザンドラ・フュラーをあげます。

 

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