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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2021年11月15日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」①
ビューティフル・カップル復讐の心理(2020年 社会派映画)

監督 スヴェン・ダディッケン

出演 マキシミリアン・ブリュックナー/ルイーゼ・ヘイヤー/ヤスナ・フリッツィー・バウアー

シネマ365日 No.3751

怒りが煮えたぎる

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」

邦題から想像しがちなリベンジものとは全然ちがいます。レイプにあったカップルが時間をかけてダメージを修復し、社会復帰できた直後、夫マルテ(マキシミリアン・ブリュックナー)はレイプ犯の少年サシャを発見する。妻リヴ(ルイーゼ・ヘイヤー)は二度と関わらないで、と夫に頼むが夫はふつふつとたぎる屈辱と怒りを抑えられない。サシャを尾行し住居を突き止め、帰宅まで待つ。マルテを認めて逃げ出したサシャを追い詰めるがあと一歩で振り切られた。「俺の人生を破壊したらお前を殺してやる」とはサシャのセリフだ。どっちがいいたい言葉だ。リヴは2年にわたるセラピーを終え、社会復帰できるとセラピストから認められ、嬉しくて夫と乾杯したあとだ。思い出すのも辛い。これ以上引きずりたくない。でもマルテの気持ちもわかるのだ▼マルテとリヴの意見の食い違いが日常生活をギクシャクさせる。仲のいい夫婦なのだ。どっちもがお互いを苦しめたくないと思っているのがよくわかる。でも平衡感覚を取り戻したかに見えたリヴさえ、夫には関わるなと言ったものの、セラピストには「怒りが煮えたぎる」と本音を訴えている。マルテはサシャの彼女ジェニー(ヤスナ・フリッツィー・バウアー)の職場(カラオケ・バー)を訪れ、サシャがレイプ犯だと打ち明けた。聞いて驚いたジェニーは「なぜそんなことをしたの」とサシャに問い詰めたら「酒を飲んでいたし、ただなんとなく」と答えるクズ男だ。ジェニーの職場でマルテ、リヴ、サシャ、ジェニーが顔を合わす。男二人は乱闘となり、止めに入ったジェニーはマルテに弾き飛ばされる。その時だ。サシャの手から落ちたナイフを手にしたリヴが、地面に倒れているサシャに思い切り突き刺したのだ。傷は深く出血がひどかった。マルテとリヴは応急手当を施し救急車を呼ぶ。ジェニーも病院に行く▼処置がなされジェニーは尽き添うことにし、夫婦は帰宅した。手持ち無沙汰なマルテが発作的にコップを壁に叩きつける。リヴが花瓶を投げつけた。木っ端微塵になった。手当たり次第の物を割り、家具を倒し、棚のものをぶちまけ、嵐の去ったような室内で、憑き物が落ちたように夫婦は顔を見合わせ、泣き笑いしながら抱き合った。「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」や「リベンジャー復讐のドレス」や、ハリウッド的リベンジものとはちがい、レイプ被害者となった夫婦の心の動きを、じわじわあぶり出す手際が深く刻印されるドイツ映画の佳品。ジェニーを演じたヤスナ・フリッツィー・バウアーはドイツ・ミステリーの秀作「カット/オフ」で、強引に解剖の助手をやらされた漫画家の女の子です。

 

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