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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2021年11月18日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」④
マスターズ&スレイブス支配された家(上)(2018年 社会派映画)

監督 オスカー・レーラー

出演 オリヴァー・マスッチ/カッチャ・リーマン/サミュエル・フィンジ/リゼ・フェリン

シネマ365日 No.3754

はい、ご主人さま

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」

ありえない不条理劇をまことしやかに押していく、オリヴァー・マスッチ監督の剛腕に敬服。裕福で平凡で、ごく普通で健全な市民が、満点のサービスを日常の生活で24時間受けていたらどうなるか、その神経の狂い方がひとつ。もうひとつは、奴隷募集で応募してきた執事の目的は何か。社会派とミステリーが一体になった佳品です。整形外科医クラウス(オリバー・マスッチ)は妻エヴリン(カッチャ・リーマン)が閉じこもりになり、身の回りの世話をするお手伝いさんを募集したが、酔っ払った勢いで「奴隷募集」とネットに載せたら何十人も集まり、慌てて「あれは間違いだ」と取り消して帰ってもらうが、その夜「あの募集はまだイキですか」と訪ねてきた中年男バルトス(サミュエル・フィンジ)がいた。名門ホテルで29年のシェフ経験。非の打ち所のない履歴で1週間の試用期間を経て採用する▼夕食となり、夫婦がダイニングキッチンに行く。バルトスは執事の正装ではべり、糊の効いたテーブルクロスの上には美しい料理。前菜は「梨のコンフィとロックフォーレエスプーマにくるみのキャラメリゼケーキ。威儀を正したバルトスに夫婦はかしこまり「バルトスさん、私の振る舞いはおかしい?」とエヴリンは訊かずにおれない。バルトスは穏やかに「主としての振る舞いは学ぶものです。現代人は奉仕も命令もできません。従うには傲慢すぎ、命令するには卑しすぎる」と持論を述べ「メインをお持ちしても?」と許可を求める。「笹肉(字幕ママ)のステーキにブラッドソーセージ添え、マッシュポテトのチリベーコンルッコラ添え」。デザートは「レモングラスのココナッツソースとミントチェリー。エスプレッソは?」とエヴリンに問うと「カフェラテを」「はい、女主人さま」。バルトスが返事をして部屋を出ると「聞いた? 私のこと、女主人さまだって!」。クラウスも満足げだ。エヴリンは飛び降り自殺の現場を目撃してからショックで神経がおかしくなり、会社経営は幹部に任せている。ありとあらゆる薬で引き出しは溢れ、部屋のカーテンを閉め切って殺伐としたテロ映画ばかり見ていた▼その彼女が明るく笑顔を見せるようになり、クラウスは幸せを感じる。バルトスの雇用条件は「尊厳ある雇用を求めています。自分の全てを捧げられる価値ある人間に仕えたい。日々の悩みと退屈な日常から解放されて喜びを感じるべき誰かに。報酬は不要です。食事と寝床さえあれば。尊厳ある雇用と役に立つ人生。それだけが私の願いです」だった。庭を見て回り「侵入者に無防備です。カメラもアラームもなく番犬さえいない。許可いただければホームセンターに直行します」たちまち防犯システムをパソコンに入力した。そして「私の妻です」とラナ(リゼ・フェリン)を連れてきた。バルトスのホテルで美容とストレス解消の健康指導をしていた。早速エヴリンに施術し「ラナ、あなたのタラソテラピーなしに生きていけない」と言わせる▼バルトスのアイデアとして庭にプールを作ることになった。前からエヴリンが欲しがっていたのでクラウスは了解した。庭に数人の外国人労働者が集まっている。「違法労働者でしょ」エヴリンが危惧すると「2ユーロ払えば彼らは家族を養えます。しかし甘やかしてはいけません」と、バルトスはブルガリア語で何やら指示した。隣家の石油王モハメッドがパーティーをするので「奴隷(労働者)を何人か貸してくれ」と頼んだ。彼はクラウス夫婦とバルトス夫婦を招待した。仮装パーティーなのでクラウスはローマ時代の執政官ふう衣装である。モハメッドは秘密の部屋にクラウスを招き入れ「悩み事はここで忘れることができる。いつでも来いよ」。暗い部屋に奇妙な器具がいくつもある。この意味はあとでわかった。すり足でそばに来たバルトスがクラウスにささやいた。「ラナを差し上げます」「君の妻だろ」「奴隷に所有権はありません」。くたびれたエヴリンが帰りたがったので辞去する。玄関の脇でバルトスが再び「ラナが待っています。ご主人さま、お楽しみください」。はじめタジタジ、あと脱兎。古今東西何処の国を問わず、男のやることはみな一緒、ということになった。

 

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