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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2021年11月20日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」⑥
ローラ(上)(1981年 劇場未公開)

監督 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

出演 バーバラ・スコヴァ/アルミン・ミューラー=シュタール

シネマ365日 No.3756

免疫のない男とありすぎる女

ローラ(バーバラ・スコヴァ)という最高のビッチがヒロインです。時代は第二次大戦後10年の西ドイツ。バイエルン州の小さな町。地元の不動産業者シュッケルトが開発を牛耳り、利権を享受している。ローラはシュッケルトに囲われる奔放な娼婦。町に新任の建設局長フォン・ボーム(アルミン・ミューラー=シュタール)が赴任した。ローラは同居する母親に訊く。母親は新局長宅の家政婦をしている。「ママ、新局長はどんな人?」教養があって男盛りよ」「なのに独身?」目がキラリ。フォン・ボームはひとつも威張らない男だった。母親に「クンマーさん」とちゃんと名を呼び「家で私は何も指示しない。あなたが指示して仕切ってくれたらいい。お嬢さんは何を?」母親は「歌手です」と返事。「ほう、クラシックの?」「ハイ」と母親は答えたが…▼シュッケルトはローラに「売春宿でエッチなどとんでもない。お前なんかが相手になれる男じゃない」「もし彼が私の手にキスしたら? シャンパン30本賭ける?」。記念碑除幕式のある会場。ローラはしとやかな貴婦人に盛装しつかつかとフォン・ボームに近づき、何も言わず右手を差し出した。フォン・ボームは迷うことなくキス。ローラはさっさと会場を後にするが、シャンパン30本で満足する女ではない。折しも町では土地開発計画がテーブルに上がり、利権と賄賂目当ての官民がハイエナのように集合した。ローラは母親にマリーヒェン(娘)の将来が心配だと打ち明ける。「おばあちゃんは掃除婦、じゃなくて家政婦。母は娼婦。父(シュッケルト)は陽気なゲス野郎」。フォン・ボームが毎水曜日図書館に行くと、母親から聞いたローラは図書館で待ち伏せする。分厚い美術書を広げているとフォン・ボームが通りかかり「東アジアの芸術にご興味が?」。ローラは男とハイキングに行く約束を取り付ける。フォン・ボームはアウトドア用に服を新調する気合の入れ方だ。「私は45歳だ。妻は私に別の男の方がいると別れを告げた。妻に感謝している。たとえ痛みでも、私に感情を取り戻させてくれた」。ローラは男があまりに生真面目で純情であることを危惧する。放っておけばハイエナどもが八つ裂きにする。「この町を出るべきよ。町の人は外側と内側ではまるで別人なの」「普通のことだ。私は町に順応している」(わかっとらんな)とローラ▼フォン・ボームはローラと婚約した。母親はフォン・ボームに、公式に婚約発表する前にその女性に会いたいという。彼女は彼女で、女に免疫のない、仕事一筋のフォン・ボームがどんな相手を選んだか気がかりで仕方ない。晩餐会を開き主だった地位にある関係者を招いたがローラは出席しなかった。ローラはわかっている。「フォン・ボームと一緒にいて楽しかった。でも歌は終わり」ローラは自分で幕を引き男から姿を消した。フォン・ボームの秘書にエスリンという男がいる。昼は役所に勤務。夜は娼館でバンドのドラマー。エステンは戦後の混乱を憂い、平和市民運動に挺身する青年だが…ライナー・ヴェルナー・ファスベンダー監督のしたたかな複眼が最も生かされている一人はこの青年だろう。「あなたにこの町の正体を見せよう」と残業するフォン・ボームを夜の町に連れ出し、ローラが歌う娼館に連れていく。男は凝然。ローラはヤケクソ。歌いまくり踊りまくり、シュッケルトの肩車で幕間に消える。フォン・ボームは腹いせに都市開発計画を白紙に戻すのだ。投資した300万マルクがパーだ、とシュッケルトはがっくり。

 

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