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特集「頑張るドイツ映画と女性監督」

2021年11月21日

特集「頑張るドイツ映画と女性監督4」⑦
ローラ(下)(1981年 劇場未公開)

監督 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

出演 バーバラ・スコヴァ/アルミン・ミューラー=シュタール

シネマ365日 No.3757

腹立たしくも美しい女

映画は恋愛模様を絡ませながら、戦後の経済復興を背景に、価値観の混在する社会をたくましく泳ぐ男女をコテコテと描いていきます。計画見直しによって町は騒然となる。利権暗躍の陰謀を廃止、正義と良心を標榜したフォン・ボームは、それが誰からも支持されないことに気づく。町の秩序と利害関係は密接に絡み合い、シュッケルトが汚れた不動産業者であることなど町の誰もが知っている。しかし彼は会社を大きくし雇用を増やし、消費を拡大し町を活性化した。やり方はどうあれ町と住民は潤ったのだ。不正を告発すべき新聞記者までも目をつぶろうとしている。シュッケルトを吊るし上げたところで誰も喜ばない。ローラは汚れた水を排斥するより、それに馴染む方が生きやすい生き方だと割り切っている。フォン・ボームは娼館にカチコミ、シュッケルトに「ローラを買おう」と公言する。そして結婚▼結婚式の日だ。ローラとフォン・ボームは大勢の関係者から祝福を受けている。新郎を置いてローラは娼館に戻りちゃっかり娼館の譲渡証書をシュッケルトから受け取り「私は高くつく女ね」と男とベッドになだれ込む。赤い満月のような頽廃の女だ。目覚ましい経済復興を成し遂げる西ドイツ社会の波が押し寄せ、手当たり次第に飲み込む。抵抗することを諦めたフォン・ボームの「幸せだよ」という言葉が弱々しい。本作はジョセフ・フォン・スタンバーグの「嘆きの天使」のモチーフを引き継ぎながら、1950年代の西ドイツの欺瞞を描いた映画としてライナー・ヴェルナー・ファスペンダーの名を高めた。「マリア・ブラウンの結婚」と「ベロニカ・フォスのあこがれ」とともに彼の西ドイツ三部作として知られる。ファスペンダー監督はどこまでも人工的に、ロマンだ、恋愛だ、という要素をあっさり削除。物悲しい物語を作り上げる。遺作となった「ケレル」もそうだったが、社会に愛を受け入れる寛容はあるのか、あるのは寛容ではなく妥協と偽善ではないか。そんな気にさせるのは、フォン・ボームの「幸せだよ」とポツリと言った表情があまりに哀切だからだ▼エネルギッシュな土建屋、シュッケルトがいい。迷いなく、疑問なく、新時代を受け入れ、ワイルドでたくましい。たくましさはどこか「風と共に去りぬ」のレット・バトラーに通じる。フォン・ボームは本来ならローラがよりつきもできなかった高みにいた男だ。ここにいたら潰される、食い物にされる、町から出て行った方がいいと言ったのは心底、彼女のモラルが言わせた言葉だろう。でも結局はデカダンスにどっぷり。それがまた堂々として、腹立たしくも美しいのだ。バーバラ・スコヴァはこの時31歳。ファムファタールにふさわしい存在感だった。現在はドイツ映画の大御所となり、「ハンナ・アーレント」「生きうつしのプリマ」「アトミック・ブロンド」で健在ぶりを発揮している。

 

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