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特集「B級映画に愛をこめて」

2021年11月29日

特集「B級映画に愛を込めて18」⑤
フレンチ・ノワール(1985年 劇場未公開)

監督 ピエール・ジョリヴェ/シモナ・ペンザカン

出演 ジャン・レノ/ピエール・アルディティ

シネマ365日 No.3765

謎多き作品

本作のフルタイトルは「ジャン・レノ フレンチ・ノワール 真実と裏切りの掟」です。長ったらしいタイトルで視聴者をその気にさせようという、よくある手ね。ジャケ写によれば「ジャン・レノは正義感に燃え事件を追う刑事を熱演」ですが、彼は完全に脇役。パリ警視庁のヴィルシェーズ警視役だが最初と最後と真ん中でチョコッと顔を出すくらい。リヨン警察のコタール刑事は捜査より小説執筆に忙しく、1日も早く閑職に移動させて欲しいと上司に頼んでいる。マルセイユにいる恋人に会いに行く途中、父親の家とパリの出版社に送った原稿の評価を聞きに寄る。原稿は「チャタレイ夫人の二番煎じだね」と突き返された。父親はコタールの妹エレーヌと弟ブノワと一緒に住んでおり、とてつもなく若い色っぽい金髪の女性ジュリアと再婚していた。コタールは6年間、父親と弟妹に会っていない。母親が死に自分だけリヨンの寄宿学校に残り、父と弟妹はパリに移ったからだ▼エレーヌは娼婦で妹はダンス教室の教師というのは表向きで、贋作絵画の売人だとわかる。贋作の製造は父親で、ブノワはヤク依存症である。妹にはジェラールというパートナーがいる。主たる登場人物はこれだけだから、殺人が起きようと誘拐が生じようと犯人はすぐわかる。ジャン・レノが熱血刑事で頑張らなくてもいいようなものだ。父親は自殺し、ジュリアが車中殺された。展開がスピーディーというより唐突である。汽車に乗り合わせていたコタールは義母の交友関係を当たる。妹はジェラールの友達だという男ベルティーニにダンス教室に通う女性たちを紹介していた。売春斡旋ではないか。仕事がなくて困っている父親に贋作を描かせるよう仕向けたのもジェラール。妹は兄コタールが6年間も家族を放っておいて今更口出しするなと非難する▼面倒臭いから書くが、全ては妹とジェラールが仕組んだことだった。ブノワは3ヶ月分のヤクで殺しに加担していたのだから、刑事の一家は総ぐるみ犯罪者である。ヴィルシェーズ警視が「なんて気の毒な男なのだ」と同情するのも無理ない。ジェラールが「そこの刑事に全てバラしてやる」と息巻くと、コタールは「真犯人は1人でいい」と言ってジェラールの眉間を撃ち抜く。妹は逃走させた。彼は刑務所にいて小説を書いている。出版された本は売れ行きがいいらしい。タイプライターはヴィルシェーズ警視が手配してくれた。なんというバカらしい映画だろう。内容を曖昧にさせている要因の1つはコタールの回想シーンだ。彼は全裸で岩山に登り母親を追いかけている。次はラフな服を着てやっぱり先に行く母親の足を追いよじ登っている。3度目は現在に近い服装で、でも追いかけているのは依然として母親だ。「家族を捨てたのではない、僕が捨てられたのだ」と妹に言い訳していたが、母親と何かあったのでしょうね。そんな奴とは一緒に暮らせないと、父親は妹と弟を連れてパリに去った。近親相姦でしょう。それにしたらもう少し陰のある青年になっていそうなものだけど、彼の心の屈折は読み取れなかった。つまりあの回想シーンは何のためにあったのか、主人公の背景が回収されないまま放り出される謎多き作品でした。

 

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