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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2021年12月2日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス4」②
人生、いろどり(下)(2012年 社会派映画)

監督 御法川修

出演 吉行和子/藤司純子/中尾ミエ/藤竜也/平岡祐太

シネマ365日 No.3768

できることを見つけ、やれることをやる

いつまでも「ハッパ」じゃなく名前をつけよう、いろどりはどうじゃ。薫の机の小さなファックスがカタカタとなる。「いろどり出荷者のみなさまへ。ビワ葉3ケース、南天ジャンボ2ケース、ハス芋20センチ25枚、青モミジ6ケース」。注文は順調に伸びた。一方で花恵が手すさびで店に並べていた手作り品を「こまやかな細工を生む魔法の手」と社会面トップで地元紙が取り上げた。花恵はハッパや草を美しく形を整えパックに詰めた。ふたりとも、初めて自分の自由にできるお金ができた。「薫ちゃん、ありがとう」と花恵は耳元で言う。「うち、おそろしいモン、のうなったし」。孤独を人に見せまいと意地を張ってきた彼女は「独り」が怖かった。誰にも知られず死んでしまうことが「考えただけでも恐ろしい」。でも今は違う。仕事と収入を得たことで、閉ざされたままだった扉は開き光が入り込んだ▼「いろどり」の発案者・横石知二さん(江田青年のモデル)は言う。「地方にも都会にも、役割のないまま暮らさざるをえない人がいる。出番も居場所もない。そんなとき、あんたがおらんといかん、あんたがいるからできたと言ってもらえることは一番幸せなことだと思う。できることを見つけ、やれることをやっていく、それをいろどりは教えたのです」。2億円ビジネスは結果としてもたらされたことで、それが最初の目的ではなかった。明るくて楽しく70歳になっても心が弾むこと。彼女らはいまいる場所で自分を花咲かせたのである。「朝起きてすることがあること、誰かと一緒にできること、役に立つこと、ハッパほど楽しいことはありゃせん」と路子の母は言う。彼女は要介護で娘が帰省したのに、バイクで走り回っている。路子はといえば、「ふん」とそっぽを向いていたが、夫の理解が得られず打ちのめされ、しかも親友の花恵が急死して、心どん底の薫に言う。「どんな生き方をしようが人はいつか死ぬ。大抵はこんなつもりじゃなかったと悔やみながら死ぬのかもしれん。それがイヤなら諦めんかったらええ。なんだって、いつからだってできるよ。いつだって、どこでだって」中尾ミエがギョロ目を剥きます。彼女は父親譲りの花木(かぼく)作りの知識と技術を生かし、事業に参加するおばさんたちにハッパ育成のノウハウを指導した。ただひとり、ウナギの養殖にやはり失敗した薫の亭主、輝男が妨害した。ハスのビニールハウスに放火し全焼させ、火事の後始末に金がいるから山を売ると薫に宣告した。山がないとハッパは取れない。「いろどり」への嫉妬以外の何物でもない。江田が憤怒し「なんでわかろうとしない。山を売るのは考えなおしてください」とつかみかかった。泥地に転がった輝男を駆け寄って助け起こしたのは薫だ。「うち、ハッパはやめん。人になんと言われてもええ、お父ちゃんだけはキライにならんといて」。「俺には初めからお前だけや」泥だらけの輝男が腹を立てたように言い、取り巻く男たちに「さっさとやれ、ここに薫のビニールハウス、建てるのじゃ!」。彼を演じた藤竜也は「反対をむき出しにしていたのに、あっけらかんと変わるのは、山や川、厳しい自然と直接関わって生きてきた農業人」の素朴さかと、解している。前向きであることを上滑りせず納得させるのは出演者たちの力量だろう。吉行和子はますます兄淳之介に似てきて、富司純子は「気になる? ふん、そんなこと気にしてるうちに寿命が来るわ」など、キレのいいセリフにお竜姐御彷彿。中尾ミエは帰郷した負け犬の自分をはね返し、薫にリキ入れるメヂカラは、その上のスパーク娘再び。平岡祐太がよかったです。徳島市からやってきた農業指導員。余所者だとのけ者にされながら、過疎の村で可能性を求める真摯な青年を好演しました。

 

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