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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2021年12月7日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス4」⑦
女囚さそり 第41雑居房(1972年 社会派映画)

監督 伊東俊也

出演 梶芽衣子/白石加代子/渡辺文雄

シネマ365日 No.3773

記憶される女優

幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス4

さそりシリーズ2作目。松嶋ナミ(梶芽衣子)のセリフが極端に少ないのは梶本人の案だったそう。物語も後半に入ってから「私を売ったね」と「死んでるよ」の2つだけだ。セリフを少なくする、短くするのが大好きなクリント・イーストウッドみたいね。真っ暗な地下牢でゴシゴシ何かをこする低い音がする。ナミが口にスプーンをくわえ床石に摩擦しているのだ。それで郷田・刑務所長に襲いかかる。彼は前作でナミに目を刺され隻眼となっており、ナミをいつか殺してやるという、私怨の塊である。その日は法務省巡察官の視察日、女囚全員が庭に整列しブラスバンドで歓迎の意を表している。脱走常習犯で、1年半地下牢に監禁されていたナミは足も立たずヨレヨレだ。その有様で襲うのだから、これは同房の女囚、大葉ヒデ(白石加代子)に「何度も失敗するなんてバカなやつ。私なら1度で成功しているよ」と言われるのも無理ない▼しかし理屈の整合性の埒外にいるナミには通じない。案の定失敗し、同房の全員7名に懲罰が課せられる。ヒデはますます業腹である。石切場での重労働、ナミへの集団レイプ、さしもの女囚たちも顔を背ける。刑務所への帰路、ナミを手当てしようとしたローズを引き離し、「お前なんか死んじまえ」と、ヒデグループがリンチする。「ナミが殺された」。運転席の看守にローズが訴え、護送車の扉を開けて中に入ったのが運の尽き。ピンピンしていたナミが鉄の鎖で看守を絞め殺し、ヒデがライフルを奪って7人が集団脱走。所長が駆け付けた時はナミを暴行した職員は素っ裸で血祭りにあげられ、股間に太い棒がぐっさり。予算も撮影期間も限られた製作だったのだろう、全編にチープ感が漂うのだが、東映の底力というか、伊東俊也監督のセンスというか、チープであることイコール低質ではないと言いたくなる力強さがある。女囚たちの罪状は、ヒデは「夫が浮気した腹いせに自身の2人の子を殺害。2人目はお腹にいたが自分の腹を切って子供を殺した」という、聞くだけで卒倒しそうな女。他には妻子のある男に横恋慕、その妻を毒殺した女。ローズは襲いかかった父親を逆に殺してしまった女。彼女たちは草1本生えていない荒野を行く。川で水浴びをしていた女囚が観光バスから降りていた男3人に陵辱される。女囚たちはバス・ジャックし、陵辱男たちを裸にして踏むわ、蹴るわ。乗客たちの女性ばかりを引きずり出し、リンチを加える。ナミは運転手に出刃包丁を突きつけ、車内の乱行を見ている。検問に差し掛かった。ヒデは「ナミを囮にしろ」と彼女1人をバスから放り出す。警官たちが包囲する隙にバスは強硬突破だ。一斉射撃で女囚たちは射殺。虫の息のヒデを抱えてナミは逃走する。ヒデは「島へ帰ったら村中に火をつけてやる」。最後まで恨みを消さず息をひきとる。ナミはまぶたを閉じてやる。シーン一転、栄転して管区長となった郷田が送り迎えの車に乗ったあと。ナミが襲撃し(黒いハット、ロングコート。いつの間に、どこで?)詮索無用、息も絶え絶えに出てきた郷田を出刃包丁でブスブス。何回さしたら気がすむ。郷田の目から転がり出た義眼に、女囚たちの高笑いが映る、エンド▼エピソードの変わり目に、能舞台や白装束など監督のこだわりと思える幻想的な演出がある。映画は大ヒットしたものの、梶芽衣子はシリーズに嫌気がさし東映と衝突した。それでも彼女のキャラは飽きられず「修羅雪姫」「修羅雪姫怨み恋歌」「シーンズブルース明日なき無頼派」「竹久夢二物語 恋する」に立て続けに主演した。ハリウッドで女優アクションが開花する以前だ。女優アウトサイダーの先鞭をつけたシャープなキャラとして、記憶されていい女優の作品だと思う。

 

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