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令和3年師走のベストコレクション

2021年12月17日

特集「令和3年師走のベストコレクション」⑧
ステージ・マザー(2021年 ヒューマン映画)

監督 トム・フィッツジェラルド

出演 ジャッキー・ウィーヴァー/ルーシー・リュー

シネマ365日 No.3783

僕たちのママ

息子リッキーのセクシャリティを理解できず、疎遠なまま息子は急死した。母親メイベリン(ジャッキー・ウィーヴァー)は贖罪のために、息子が遺したドラグァ・クイーンの店「パンドラ・ボックス」を受け継ぎ、テキサスからはるばるサンフランシスコに来て、右も左もわからない世界に踏み込む。息子の親友シエナ(ルーシー・リュー)は売春婦のシングルマザー。「この子にもリッキーという名前をつけたのよ」とベビーカーの赤ん坊を見せる。母は息子がどんな生活をしていたのか知りたいと思う。店の共同経営者であり、私生活でもパートナーだったネイサンは、いきなりオーナーとして現れたメイベリンに敵意をむき出した。両親の無理解がリッキーを苦しめていたと彼は考えている。テキサスの片田舎の常識からすればドラグァ・クイーンとはゲテモノか変態だ。リッキーの父は今も息子を恥じている▼「パンドラ・ボックス」はリッキーの死後低迷し赤字経営だ。息子の周りには問題あり、の男たちばかりだった。妻にゲイであることを打ち明けられないチェリー。ドラッグ中毒で体調に異変をきたすジョーン。母親の無理解に反発し、仇のごとくみなすテキーラ。全盛期を過ぎて老いゆくダスティ。夜になりきらびやかなステージ衣装をまとい、ライトを浴びると彼らは別人に生まれ変わる彼らにはどこか哀愁が漂っていたが、力強くセクシーで、堂々として凛々しい。こんな素晴らしいクイーンたちなのに客席がガラ空きなのが悲しい。メイベリンは営業に出る。シスコ随一のホテルに来て「宿泊客に見せたい」とフロントに頼むと店の名を聞いただけでノー。通りかかったのがコンシェルジェ長のオーガストだった。メイベリンのアクセントに「テキサスかね。子供のころ夏休みを過ごしたよ。素晴らしいところだった。ショーはうちの宿泊客にお薦めできるか?」。ぜひその目で確かめてほしいとメイベリンは自信たっぷりに言った▼チェリーはメイベリンに付き添われ妻と会った。テキーラの母と会ったメイベリンは「自分の育て方が間違っていたかも」と後悔する母親を店に招待する。彼女が見たのは世間を拗ねていじけていた息子ではなく、輝く女王だった。暴力を振るうシエナの客にメイベリンは割って入り銃を突き付ける。「2度とシエナに近づいたらあんたの犯罪歴を警察にバラしてやる。女を殴る男を殺すのが私の夢のひとつなの」。テキサスの教会で聖歌隊の指揮をしているメイベリンは、クイーンらに口パクでなく自前で歌わせた。綺麗なハーモニーが生じ「こっちの方がいけるぜ」。ステージは盛り上がった。最難関は夫でありリッキーの父だった。頑なに息子の良さをわかろうとせず「お前が甘やかすから意気地なしになったのだ」と責める夫に「私も世間一般でない息子を恐れていた。でも私は変わったの。あなたがいう、息子は恥ずかしい存在じゃない。彼はスターなの。そこは私に似たのね」▼店は軌道に乗った。メイベリンがテキサスに帰る。彼女から店を引き継いだネイサンはその夜のステージでメイベリンを紹介した。「僕のママです」。リッキーがいつも「メイベリン」と呼びかけていたプラチナブロンドのウィッグをつけ、白いステージドレスをまといメイベリンがバッチリ、フルメイク。歌い上げるのはポニー・タイラーの代表曲「A Total Eclipse of the night」。キャリアウーマンでもなく、カッコいいヒーローでもない田舎のお母さんが、ただ息子にすまないことをした、息子が愛し、彼を愛してくれた仲間たちとわかりあいたい、そんな気持ちだけで心を通わせ合うプロセスに無理がありません。クイーンたちもはしゃぎすぎず、一歩舞台を降りると世間の性差別と向き合うナイーブな陰りを見せ好演。メイベリン役のジャッキー・ウィーヴァーは「アニマル・キングダム」「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー賞助演女優賞ノミネート、「イノセント・ガーデン」「チア・アップ」などがあり、ラストの歌唱では舞台で鍛えたノドにモノを言わせ、お見事。

 

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