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特集「銀幕のアーティスト」

2021年12月22日

特集「銀幕のアーティスト13」③
竹久夢二物語 恋する(1975年 事実に基づく映画)

監督 斎藤耕一

出演 北大路欣也/梶芽衣子/中野良子

シネマ365日 No.3788

別れて正解の男

身勝手な男と、彼に忍耐と体力を試された女2人の映画。たまき(梶芽衣子)は25歳、夢二(北大路欣也)は23歳。「一緒に暮らしてあんただけを描きたいンじゃ」と、頭を擦り付けんばかりにして頼む夢二と所帯を持ち、息子2人を産むが絵に行き詰まった夢二は房総へ旅に出る。2年後東京に戻り「やっぱりあんたが必要だ」と土下座する。夢二の絵葉書や商品を売る「港屋」を開店。来店した美術学校の生徒、彦乃(中野良子)と出会う。夢二30歳の時だ。本作はたまきと結婚した夢二が彼女と別れ、彦乃と同棲し死に別れるまでがメーン。夢二の絵は売れたし、若い弟子たちが「港屋」の2階にたむろし、サロンのような活況を呈していたし、経済的にも悪くない環境だった。たまきはしっかり者の姉さん女房だ。夢二はやり込められ「なぜお前の論理を押し付ける。そこがキライなのだ。お前の奴隷じゃない」と怒るが「私こそあなたの奴隷よ。助けてほしいと土下座したのはあなたよ」▼たまきは彦乃が現れたとき、自分たちはもう終わりだとわかり、大胆な提案をする。「彦乃さんをあなたの嫁さんにもらい、ここで3人一緒に暮らしましょう。あなたの絵が素敵になるならいいじゃありませんか。でも今のあなたは私が作ったのよ」。彦乃の両親にまでかけあうのだ。父親は驚愕する。「ご亭主の嫁にうちの彦乃をくれだと?」「私は夢二の妻ですが籍は入っていません。私は子供のためだけに生きていきます」。生きるの、死ぬの、の騒動のあと夢二は「港屋は君にやる。今度こそ別れよう」正式に離別となった。たまきのためにはその方が良かったのだ。彦乃は何しろ大店の一人娘。ウブだ。待ち伏せしていた夢二が「僕と一緒に歩いてください」と誘い散歩する。馴れなれしい男にろくな奴はいないと誰も教える暇はなかったのだろう。幸福な一時期もあったが。彼女は結核で死ぬ。25歳だ。彼女の体力は夢二のために使い果たしたようなものである。その後、夢二は画業に専念するが葉子というモデルと同棲に及ぶ。多情な男なのである。彼の絵は美しい。憂いのある繊細な女性の、現代風美人画であろう。人気があったこともよくわかる。しかし絵を描くために女性にミューズを求める男などと関わったらドツボだ。エゴン・シーレは家柄の良い女が現れたからと献身的に尽くした娼婦ヴァリを棄てる。ロダンと女弟子クローデルも、芸術家同士の軋轢はあったとはいえ、男が女を棄てたことに変わりはない▼いいとか悪い、の問題ではなく、アーティストは大なり小なり、パートナーを自分のアートのダシに使う。女もそうであればよかったのだが、女たちの選択肢が少なすぎた時代が、彼女らにとって過酷だった。たまきも彦乃も絵描きの端くれである。夢二の絵とは自分の人生を棒に振っても満足するほどの作品か。そうとらえるほど、たまきと彦乃が傲岸な女であれば、人生は違う展開になり、第一、夢二のような甘ったれは近づいてこなかっただろう。好き同士の2人がお互いに庇護と救済を求めるのはいい。しかし男がそれを求め、女がそれに応えるのを美徳とか、愛情とかに勘違いすることは辛い。

 

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