女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「銀幕のアーティスト」

2021年12月23日

特集「銀幕のアーティスト13」④
人生はシネマティック!(上)(2017年ヒューマン映画)

監督 ロネ・シェルフィグ

出演 ジェマ・アータートン/サム・クラフリン/ビル・ナイ

シネマ365日 No.3789

なぜ人は映画が好きだ?

第二次世界大戦下の1940年、民意を鼓舞するプロパガンダ映画を作る脚本家チームの話。ヒロイン、カトリン(ジェマ・アータートン)は情報省映画局に採用される。コピーライター部の秘書だったが、男性全員が徴兵され、女性のセリフ担当としてチームのリーダー、バックリー(サム・クラフリン)が指名した。女性のセリフは「スロップ」(つまらないもの)と呼ばれていたが、カトリンは機知のある脚本を書きバックリーの信頼を得る。ダンケルクの上陸作戦に貢献した勇敢な双子の姉妹がいたという新聞報道をもとに、カトリンは姉妹を取材するが、彼女らはダンケルクの8キロ手前で船がエンスト、牽引してくれた船からあふれた兵士を乗せただけで記者の勘違いによる記事だった。しかしカトリンは姉妹の事実をつなぎあわせ「他の船と同様に兵士を乗せて沖の大型貨物船に運んだ、2人が覚えているのは些細な真実味のあることです。ナップザックに犬を入れた兵士、キスしようとしたフランス兵。彼女らの父親は飲んだくれの酔っ払い。2人は父を恐れながらナンシー号(船名=彼女らの母親の名)に乗りました。姉妹の勇敢さを伝えたい」。プロデューサーは「素晴らしい!」両手を挙げ製作をゴーした▼映画作りのディテールが細部にはめ込まれ、脚本執筆陣の奮闘が始まります。「事実と違う」とカトリンが異を唱えるとバックリーは「現実から無駄な部分を削るのが映画だ。事実と真実は違う」と力強く、物語を推進する。しかし「ナンシー号の故障が英国のエンジン技術に不信感を与え、士気低下を招く」「双子はダンケルクに着かなかった、英国海峡さえ渡っていないというのは本当か」など次々横槍が入った。バックリーは言い返す「700隻の船がダンケルクに向かい、33万8000人の兵士を救出した。そこには33万8000の実話があるはず」詭弁かもしれないがプロデューサーは「ダンケルクは国民の熱意を取り戻す奇蹟だ。製作を続けろ」▼カトリンにはウェールズで知り合った内縁の夫がいる。足の負傷のため兵役に就けずロンドンで空襲視察官をしている。彼は画家だ。どの絵も暗い。当然売れない。「君はウェールズに帰れ。2人分、食べていけない。僕は友人の家に寄寓し絵を描く」カトリンは自分が稼ぐから一緒にいたいというが、夫はウェールズの展覧会に出品すると言ってロンドンを離れた。バックリーはカトリンの筆力を評価し昇級をかけあってくれた。カトリンは彼によって映画の吸引力に目覚める。「なぜ人は映画が好きか。ストーリーには形、目的、意味がある。不幸な展開も作為的で意味がある」それはただ事実をなぞっただけの人生とは違う、作劇術の魅力だった。カトリンは脚本執筆に歓びと情熱を見出す。メガトン級のクレームが来た。アメリカの配給会社の注文だ。「アメリカの観客は刺激的なシーンを好む。爆発、衝突、勢いよく角を曲がる救急車、ロマンスも同様だ。あなた方は控えめすぎる。我々から言えばパンチ不足だ。この映画の結末は抑制されすぎて退屈だ」。しかし肝心のバックリーとカトリンが失速した。カトリンが夫の展覧会期間中に間に合うよう、スケジュールをやりくりしてウェールズに着くと、夫は他の女とベッドにいた。うなだれて戻ったカトリンにクレッグは怒鳴る。「生活苦で君を返そうとした男に気兼ねするのか。クソ間抜けな男だ。君ほどじゃないが。自尊心はないのか」「あなたも所詮酔って威張り散らすだけの男だわ」。決裂。カトリンのいないクレッグも、クレッグのいないカトリンも翼をもがれた鳥だった。クレッグは意地でラストを書き換えるが彼らしいパワーはなかった。2人の仲を知っている同僚のムーアが言った。「撮影中あなたは輝いていた。私たちは明日死ぬかもしれない運命よ。時間を無駄にしないで」ロンドン大空襲があった。爆撃で壁の落ちるオフィスで、カトリンはラストシーン改稿のタイプライターを叩く。

 

あなたにオススメ