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特集「銀幕のアーティスト」

2021年12月24日

特集「銀幕のアーティスト13」⑤
人生はシネマティック!(下)(2017年ヒューマン映画)

監督 ロネ・シェルフィグ

出演 ジェマ・アータートン/サム・クラフリン/ビル・ナイ

シネマ365日 No.3790

映画は私たちを必要としている

バックリーがプロポーズした。「君の改稿を読んだ。見事だ」「あれも読んだ?」。カトリンは一世一代のラブレターを挟んでおいたのだ。「あなたが恋しい」と。爆撃を受けたスタジオはごった返していた。スタッフは入院か欠勤か行方不明。セットにいたバックリーに、重い撮影用カメラが落ちた。粉塵の舞う床に倒れたバックリーの、死亡が確認された。映画は総仕上げにかかっていた。またしてもクレームがついた。「この映画には欠陥がある。壊れた船のスクリューを直すのが老人で、やるせなさすぎる」。老人役の俳優は足を骨折し入院した。撮り直す? 誰がどこをどう。虚ろになって打ち合わせのテーブルに背を向け、窓の外を眺めていたカトリンがつぶやいた。「ローズよ。ローズがクリューを直すのよ」ローズとは双子姉妹の1人だ。クライマックスに女優を配したことで、映画「ナンシー号の奇跡」は女性客を動員した▼クレッグの死からカトリンは立ち直れない。ヒリアード(ビル・ナイ)が来た。彼はベテラン俳優で老いて主役を離れているが、気取りとうぬぼれは元のまま、20年前の知名度にすがって生きている。彼が言う。「カトリン、プロデューサーが新作を作る。引退したばかりの泥棒の話だ。役作りはほぼ僕に任されている。問題は脚本が下手なのだ。君の時間と才能を貸してくれないかな」「もう、辞めたのです」「我々にチャンスが回ってくるのは若い男が兵隊にとられるか、あるいは死んでしまったからだ。だがチャンスに背を向けるのは死に生を支配させているのと同じだ。たとえ大きな喪失感にとらわれていようとも」。脇役陣の充実も特筆ものだろう。ビル・ナイが憎らしいくらい、うまい。オフィスに復帰したカトリンがタイプライターを叩いている。ムーアが入ってくる。どんな脚本? 「愛し合う話よ。男と女が愛し合う。女と女が愛し合う」。カトリン復活を見届けてムーアはニヤリ▼なぜ脚本家になったかと聞かれたクレッグはこう答えていた。「映画に救われたからだ。目的を与え、僕を作ってくれた」カトリンはそれを理解できた。誰でも映画や音楽に救われた経験があるだろう。人生における芸術の大切さを彼は指摘したのだ。言葉は変わっているが、東京国際映画祭で審査委員長を務めたイザベル・ユペールはこう言っています。「私たちは映画を必要としているし、映画は私たちを必要としている」。ロネ・シェフィグ監督はデンマーク出身。彼女は「幸せになるためのイタリア語講座」でベルリン国際映画祭銀熊賞、「17歳の肖像」でサンダンス映画祭観客賞受賞。最近作は「ニューヨーク、親切なロシア料理店」。苦悩を抱えるワケあり男女のヒューマン・ストーリー。ビル・ナイが怪しげなロシア語を喋る人物で出演しています。ジェマ・アータートンは代表作に困りますが、高齢者合唱団「年金ズ」の合唱コーチ、シアーシャ・ローナンと母娘ヴァンパイアを演じた娼館「ビザンチウム」「ボヴァリー夫人とパン屋」では、官能的なパンの頰張り方に目をそばだてました。クレッグのサム・フタフリンは「ナイチンゲール」。タスマニアで女囚に暴行の限りを尽くす極悪非道の査察官がとびきりでした。

 

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