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特集「令和4年新春ベストコレクション」

2022年1月2日

特集「令和4年新春ベストコレクション」②
ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢(下)(2020年 ヒューマン映画)

監督 ニーシャ・ガナトラ

出演 ダコタ・ジョンソン/トレイシー・エリス・ロス

シネマ365日 No.3799

誇り高き挑戦

特集「令和4年新春ベストコレクション」

「今のあなたにふさわしい確実な売り方だ」と製作会議の席でプロデューサーたちがグレースに勧めた。「今は売れている歌手でもベガスで公演する」。マネージャーは満足げに承知し、グレースは黙っていた。ふたりになってグレースは浮かない顔のマギーに切口上で言う。「はっきり言ったらどうなの。私は信念を曲げたわ」「グレース」マギーも言い返す。「あの傲慢でチャラチャラした連中は会社を大きくしたのはあなただということを忘れているのよ。あなたは終わった人じゃない。ベガス行きはやめ、ニューアルバムを出すべきです」「曲を作るのはこの私。もう曲なんて作れないのに」「書いているわ」「…なんですって?」。マギーは酔っ払って眠ったグレースが、ベッドの下に開いたまま挟んでいたノートを見たことがある。まぎれもない新作の歌詞だった。グレースは畳み掛ける「あなたの仕事は日程管理。炒め物の中のピーナツを避けること(グレースはピーナツが嫌い)。私の成功を保証できる立場じゃない。彼らが私に示すのが“安定”の道。あなたが示すのは“転落”の道よ」▼グレースと決裂したマギーは故郷に帰りラジオ局で父親のDJを手伝った。クビになったマギーに「母さんはグレースの全バージョンを聴いていた。歌っていうのは面白いもので、歌う人間が変われば別のものになる」「私が悪いのよ。でもグレースと働いて自分がプロデューサーになりたいとわかったの」「それを伝えたのかい」「もう会うこともないわ」「電話してみろ」。その頃グレースは屋敷の管理人、ゲイルと話していた。「あの子、鬱陶しいのよ。私はマギー、音楽オタクよ、と顔に書いてある」「やたら気をつかうのがウザイわ」でもね、とゲイル。「あの子、あなたを崇拝していた。何もねだらなかったでしょ」「…1つだけ。私をプロデュースしたいと」「プロデュースする? あなた、引退したと思っていた」「していないわよ!」。マギーは留守電に吹き込んでいた。「お詫びします。でもあなたにお礼が言いたくて。あなたは私のヒロイン。憧れの人を間近で見られる最高の時間でした」。ある日ドアを開けたらグレースがいた。謝りに来たのではない「仕事でヘマしたのはあなたよ。クビにして当然よ」でも、と続けた。「あなたのサポートを当たり前だと思っていた。あなたを誰よりも信頼していたのね。あなたは有能だった。一生懸命働いた。その上私の歌を愛している。それが嬉しいの。あなたの作ったライブ・アルバム、よかったわ。あなたなら私の声を私らしく響かせてくれる。いいプロデューサーになれる。タフな仕事になるわよ。中年の歌手はヒットを出しにくいの。その上組んだことのない女のプロデューサー。やってみる?」「ぜひ」「実は曲を書いているの」「やっぱり」。デヴィッドはグレースの息子だった。親の七光りは受けたくないと独自で活動していたのだ。彼は自作の初めてのライブの日「特別ゲストを招いている」と観客に言った。現れたのはグレースだ。トレイシー・エリス・ロスの映画で初めての歌唱シーンというのがラストのデヴィッドとのデュエットだ。ロスの力量と存在感が圧倒する。業界が目をくれなくなった元ディーバを、自分の感性を信じて新曲をプロデュースするマギーと、どん底から這い上がろうとするグレースの誇り高い挑戦が、サクセスと言うより、ヒューマンストーリーにしている。

 

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